ソニーシティみなとみらい

ソニーのイメージングプロダクツ&ソリューションズ事業、メディカル事業の拠点を集約した、〈ソニーシティみなとみらい〉。新たなソニーグループの価値と未来を切り拓くため、自律したプロフェッショナルたちが多様な交流を通して価値や専門性を向上させるオフィスとして計画された。 〈ソニーシティみなとみらい〉のコンセプトは、価値や専門性の向上、広がり、交わり、シナジーを切り拓くという意味を込めて、“OPEN UP”としている。 この“OPEN UP”を実現するため、①多様なコミュニケーションを通した働き方ができるコラボラティブな空間、②互いに刺激しあい、発見し、発信し、新しいクリエイションを生み出せるクリエイティブな空間、そして、③目的や用途に応じて柔軟に構成できるカスタマイズ可能な空間が必要と考え“STUDIO”という空間コンセプトを策定した。 この空間コンセプトをもとに、事業主力製品であるカメラ本体の黒色をアクセントに使いながら、木や金属、モルタルなど制作環境にある機能的な素材や色をそのまま活かすトーン&マナーを設定し、レセプション、会議室、食堂、執務エリアから実験室およびサイン計画までトータルにデザインを行った。 入居する建物は、地上18階のビルで2階がオフィスへのエントランスおよびレセプションとなり、低層階はお客様やパートナーを交えた多様なコミュニケーションが可能なエリア、中層階・高層階は社員専用のスペースとして構成されている。 5階来客会議室フロアは、さまざまなサイズの会議室、100人以上を収容するカンファレンスホール、長期間占有できるプロジェクトルームが配置され、目的や用途に応じて使い分けができる。 通路空間に伸びる木製のH型フレームは、カメラと被写体の距離が測れるスケールバーと照明の可動性、作品の展示機能も兼ね備えている。またオブジェのような特徴的で存在感のある観葉植物は、撮影の際の被写体としても機能する。OAフロアのパネル四角の留め具を真鍮で削り出すなど、多様で素材のもつ質感を活かした空間構成により、お客さまをお迎えする場においても空間コンセプト”STUDIO”を表現している。 6階食堂フロアは、喫食エリア中央に伸びる大きな垂れ壁により空間内に内と外の関係をつくり、段差による床の高さの変化、天井があるエリアとスケルトンエリアの対比、窓面に向かって明暗を調整した照明計画など、明確にコントラストを感じられるように連続させることで、ビルの中にいながらまるで屋外に出たかのような解放感と心地よさを実現した。中央の厨房・提供エリアを囲むように回遊性のある喫食エリアとなっており、みなとみらいの景色を楽しみながら食事ができる。また気分を変えて仕事やランチミーティング、イベントも開催可能となっており、さまざまな使い方が可能な食堂となっている。 執務エリアは、社員の声を反映して中央側に位置する活発に意見を交わせるコミュニケーションエリアから、窓側の個人が集中を高められるソロワークエリアへシフトするゾーニングとし、ワークスタイルに合わせて場を選ぶABW(Activity Based Working)型オフィスとして社員の自主的な働き方を推進している。コミュニケーションエリアは幅2400mm×奥行き2700mmのモジュールで構成されており、ニーズによって頻繁に起こるレイアウト変更にも柔軟に対応できる。また”STUDIO”コンセプトのトーン&マナーとして、金属本来の質感を引き出す素地仕上げのパネルをもとに空間全体をグレートーンでまとめ、社員が業務に集中できるよう制作環境の雰囲気をつくった。 サイン計画は、”STUDIO”コンセプトの空間との調和を図るデザインとして、ソニーのコーポレートタイプフェイスSST をステンシル書体で表現し展開した。柱や会議室の扉などに意図的に大きく設置することで、空間の効果的なアクセントになっている。 デザインパートナーとして迎えたSUPPOSE DESIGN OFFICEの既成概念にとらわれないアプローチや素材に関する豊富な知識、ディテールへのこだわりといった強みはソニーとの親和性が高く、彼らとのコラボレーションによって生み出されたこの空間自体が、新たな価値創出の実証プロジェクトになっている。

クレジット

  • 設計
    (クリエイティブディレクション)ソニー クリエイティブセンター、SUPPOSE DESIGN OFFICE、ソニーPCL(2F受付、5F展示エリア)
  • 担当者
    (サイン)6D、(実施設計)三越伊勢丹
  • 施工
    乃村工藝社、清水建設、コクヨ、イトーキ
  • 撮影
    長谷川健太

データ