松戸の家4

千葉県松戸市の住宅街に設計した3人家族のための住宅である。 建主の実家の建て替えで、その土地の環境については建主が一番よくわかっていた。3方が開けた場所で、北側には畑があり、東側には駐車場、南側の敷地の向かいには公園がある。その公園側の前面は開けた空間となっているが、風が強い日には砂埃がまうとのこと。 建主は建築が好きで、家を建てるということに強い想い入れがあり、要望は多岐にわたった。外観は、平屋ということと外からできる限り窓を見えないようにし、建物の形状と屋根型を極力シンプルなデザインにすること。内部は明るく、風が抜けるように窓の配置を考え、インテリアは真っ白な空間の中に部分部分に素材感を感じたいということだった。間取りでは、モールテックスのアイランドキッチンを軸に、リビングとダイニングキッチンはがつかず離れずの距離で家族の一体感があり、洗面所とお風呂はガラスで仕切り窮屈な空間にならないように空間としては一体にしたいなど。 これらの諸条件を一つ一つ整理していくことから基本設計が始まった。 まず、希望されたダイニングキッチンとリビングの広さから他の部屋の広さを考えると、収納面積が取れなくなる。そこで平屋という考えに固執せず、収納量を確保しながら平屋ぽく見せることに考えを変え、1階の一部の床を下げて天井高を抑えた収納部屋を作り、その上に子供を作ることで2階の高さを抑えることができ、全体的に平屋に見えるように計画した。 窓の配置については、南側にある前面道路の向かいの公園からの砂埃のことを考えながら前面道路から窓が見えないよう、南側の見える壁には窓を設けていない。しかし、内部を明るくすることと、風を抜けるようにするために一部窓を設け、明るい玄関とダイニングキッチンとし、南側から北側に風が抜けるようにした。 建物の平面をコの字にして中庭を作り、その中庭にウッドフェンスを作ることで外部から窓を隠し、外と内とで視線が合わないようにしている。 この視線を気にしない中庭からの明かりが片勾配の天井を照らし、明るい空間となっている。 インテリアでは、木目を見せるところと壁と一体になるような白い扉などにし、色の種類を少なくしている。階段の手すりはスチールで作り笠木には無垢材を使い、手が触れるところは無垢材にした。 特にこだわったのはキッチン周りだ。キッチンは建主の要望でモールテックスを使ったキッチンとし、そのキッチンとダイニングテーブルを一体にしたダイニングキッチンになっている。キッチンダイニングとキッチンの収納のバックセットは、弊社で図面を描き、持井工務店さんと細かい打ち合わせを重ねて作り上げた、オリジナルのキッチンダイニングになっている。 ベッドタウンである松戸で平家は難しいのではないかと思っていたが、敷地面積が50坪弱あれば可能だということがわかったプロジェクトだ。

クレジット

  • 設計
    大畠稜司建築設計事務所
  • 担当者
    大畠稜司
  • 施工
    持井工務店
  • 構造設計
    MASA建築構造設計室
  • 撮影
    小川重雄

データ