北海道の素材を使用した手づくりドーナッツを味わえる「HIGUMA Doughnuts（ヒグマドーナッツ）」と、良質なコーヒーを気軽に楽しめる「CoffeeWrights（コーヒーライツ）」の共同店舗である。敷地となったのは表参道駅近郊の閑静な住宅街にある、オフィスなど五つのテナントがラウンジ、庭、キッチンを共有する複合施設「ミナガワビレッジ」である。一つの敷地に、四つの建物が中庭を囲うようにして並ぶこの場所は60年前に始まった。増改築、空き家の期間を経て2018年にリノベーションされ現在の形となり、「変わり続ける場所」をコンセプトに、今も新陳代謝をしている。地域との接点となる、道路に面した棟の1階が今回の舞台となった。 室内は75㎝の段差を伴って二つに分かれており、前面道路からは65㎝掘り込まれていた。そのため中庭の築山による緑が、道路を歩く際、視界に優しく入り込むのが印象的だった。そこで段差を肯定的に捉え、「座る」や「物を置く」きっかけとしてデザインに取り込むことにした。まず段差を利用して雛壇状の席を設けた。道路側のFIX窓の一部を開閉式の大きな引き戸にして自然の風を取り込み、雛壇席を道路側へと伸ばして基礎の立ち上がりを利用した外部ベンチ席へと一体的につなげた。素材については単菅パイプや溶融亜鉛メッキ、合板といったこの施設に使用されている材料を取り入れることで、建物全体としての関係性を築いた。ドーナッツとコーヒーを求めて気軽に人が集まり、そのにぎわいがファサードへにじみ出す「ミナガワビレッジ」の玄関となるようにした。