




高松市内の雑居ビルが今回の敷地である。ビルの三階部分に位置し、外からは全く中の様子が伺えない造りであった。初めて内見したとき、外はすぐそこにあるのに遮断されているため別世界に来たような錯覚を覚えた。この体験をデザインに落とし込めないか。これがすべての出発点であった。 そしてクライアントの要望を聞くうちにアンティークテイストを希望していることが分かった。 ただ、高価なアンティーク品を揃えることは予算的に厳しく、違うアプローチでアンティークを魅せる必要があった。 そもそもアンティークとはモノに歴史が加算され、誰かが評価すればアンティークとなり、評価がなければジャンクになる、といったかなり流動的で主観的なものである。となればこの雑居ビルの汚れや傷、痕跡といった歴史に価値を見出すことが出来ればアンティークとして解釈できる。躯体に漂うアンティークの要素と我々のデザインを掛けることで、”新しいアンティーク”を表現しようと考えた。 具体的に述べると、躯体はスケルトンで利用、傷や汚れといった痕跡はアンティーク要素とし空間に還元した。 これらの要素を、デザインしたアンティークテイストの腰壁と混在させる。そこにあった要素が新しく入ったアンティークテイストを立派に見せ、テイストはアンティーク要素を際立たせる。 2つのアンティークから良い意味で違和感のある、既視感のない空間が完成した。 そしてこの空間を増幅するように配置されたミラーが、より空間の世界観を別次元のものへ引き上げ、最初に述べた“別世界に来たような錯覚”を想起させる。現代人が経験したことのない混沌の時代だからこそ、日々の喧噪を忘れる、別世界が必要なのではないだろうか。
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