47 sqm two-level apartment in shanghai

ビルディングタイプ
その他住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    UCHIDA SHANGHAI
  • 担当者
    庄司光宏
  • 施工
    海内外建筑装饰工程
  • 撮影
    長谷川健太

敷地は上海浦東、ショッピングセンターと地下鉄駅まで徒歩3分の立地である。 施主は上海人、夫婦と子供の3人家族 上海に購入したスケルトンのマンションはとても狭かったが新しい生活空間の可能性を求めて私に設計依頼してきた。以前は300平米の賃貸マンションに住んでいたが子供も大きくなりそろそろ家を出るのでコンパクトな生活にシフトしたいとのことだった。 幸せはなるものではなく感じるもの。 住宅における豊かさとは何か?それは何に価値を置くかで感じ方は変化すると捉えている。 要は施主が感じられればそれが豊かなのではないかと思う、普遍的なものではない。 金を出せばほぼなんでも手に入る上海では価値観の創造が一番難しい。 かと言って広さ、豪華さ、ブランド品も豊かさのエレメントとしては決して否定は出来ない、でもそれがここでは限度がある。施主はこの狭小空間の中に漠然と豊かさと新しい高級感を感じられることを唯一の希望としてオーダーしてきた。狭くても彼らの基準の快適性と最小限の好きなものに囲まれて生活したい。これを実現するためにスタディを繰り返した。 新しい高級感 狭くても工夫すればいいでしょ、家具はイケアか無印で買えば十分でしょとか 無添加の食品食べてヨガすれば、私は幸せよみたいな価値観ではなく、内装も家具も良いデザインで自分だけの特別なものが欲しいという人たちも確実に存在する。決して華美なものだけを求めているわけではなく本質的なアーキテクチャーを、この施主はそういうタイプだった。長渕剛さんの名曲I love youのようにストレートな本音と建前をどのようにデザインに消化すればいいか試行錯誤した。そう、それが新しい高級ってものにつながるのではないかと 余白をあまり作らないこと、個から全体を構築する。 そこで一つの仮定としてデザイン言語の手数を増やした。余白をあまり作らないことにコンセプトを決定した。新しい空間配置で色々な住み方が誘発されますとか、そうゆうことではなく きちんと好きなものをデザインして積み重ねる、個から全体を構築する手法である。 一つ一つの施主の希望にデザインを与えていく作業であり狭小住宅にありがちな収納不足など基本的な機能はもちろん全て解決している。大きく吹き抜けをとる案も並行して提案したがあまりにも2階の環境がタイトになってしまう為現行の案を採用した。 椅子の下に収納があったり、壁から机が出てきたり工夫が随所にあるのだけれども、とても大きな窓だったり無垢のテーブル、ルーバーの引き戸だったり豊かさを感じる言語の手数を増やし全てが説明可能な部分として設計した。もちろん施主が好きなものである。結局狭くても欲しいものは欲しいのよと、いい意味で諦めないデザインを実現したかった。 その手数を一つの世界観でまとめることで狭小の中に愛着と豊かさを感じることができるのではないかと。 例えば、子供が学校で友達にうちの家は狭いけどテレビは壁とツライチだし、階段は手すりが光っているしミニバーもある、集中できる勉強机だってある、大型ロールスクリーンは電動でホテルみたいよと言ってくれたらこちらの思うツボである。 そして、それぞれ別のエレメントがデザインコントロールされている。 一つの世界観が竹による質感と造形である。7mm縦積層の炭化した竹集成材をキーマテリアルとして調色し素朴な中にも高級感がある独特のテクスチャを獲得することに成功した。一部家具部分と床材を除き竹集成材を内装材として使用している。私が継続して研究使用してきた素朴ながらも新しい高級を感じるマテリアルである。 フローリングと躯体側の壁面材はあえて白基調のオークを貼り竹集成材とのコントラストを強調しているのと空間的な広がりを与えている。 プランについて 一階は水回りとリビングダイニング 造り付けのソファの横にミニバーとワインセラー 既存の開口サッシの手前には断熱、遮音効果も高まる木製フレームの窓が再設計されインテリアの調和を取っている。夜景を見ながらアートブレイキーをかければそこは極上のラウンジバーであり友人を呼んでのパーティーもおこなえる。 5mmフラットバーと竹のルーバーによって製作された引き戸によりキッチンエリアとリビングエリアは分節可能で狭い空間の中にも連続性を感じさせたかった。 基本収納は壁面と一体になるような処理がされ収納という言語が目立たないように注意し設計。キッチンの後ろ側も収納でゴミ箱も含め機能をビルトインしている。初めての人はどこが収納かわからないだろう。 階段を上がると二回はベッドルームと畳の子供部屋でプライベートの空間である。 ミラーにより細長い階段スペースはリフレクションし広さの確保とともに全身鏡にもなっている。2階の床は巾50mm細いフローリングのヘリンボーン貼、一階とは異なり低い天井を躯体の直塗装とし床に質感を持たせた。畳の部屋は子供の寝室で壁面収納と共に勉強スペースが計画されている。採光を確保するために障子の建具で境界を設定している。 最小空間に最大の収納量と複数のデザイン言語を投入した47平米のこの住宅は様々な要素の集積により成り立っている。 47平米という小さな住宅の中に幸せを感じてもらったら、たまらなく嬉しいことである。

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