
90年の歴史をもつモロゾフ旗艦店のショップデザインを手がけるにあたって、2つのテーマを掲げた。1つは今までの利用客にも愛されるショップであること、もう1つはモロゾフの未来に、より期待感を抱かせるようなデザインである。 モロゾフを代表する菓子「アルカディア」の缶は、世間でも認知されている馴染みあるグラフィックであり、「アルカディア」とは古代ギリシャの「理想郷」を意味している。このパッケージから受ける印象をファサードに取り入れた。ゴールドと黒のパターンは、真鍮と黒皮鉄で重厚感と同時に繊細な印象で表し、ペイズリー柄の有機的な曲線は、ガラス越しに見えてくる葉型(リーフ)のアートで表情を現している。葉型のオブジェは、モロゾフのアイコン的な菓子「ファヤージュ」と同じ形状でレーザーカットされたアルミパネルである。コーポレートカラーのグリーンとゴールドカラーで仕上げたリーフはライティングによって煌びやかな光を反射させ、その姿は期待感や幻想的な印象を与えてくれている。 一方で、ショップの奥にあるカフェエリアはあえてクラシックな意匠に仕上げた。より現代的な手前の販売エリアと、奥のカフェエリアを対照的に構成し、その間にガラスパーティションを施している。パーティションのガラスは、3色3種の異なるモールガラスで構成されており、それぞれのエリアに吊られたペンダントライトや、光で反射するリーフがガラスへ不規則に屈折し映り込み、大きなシャンデリアのように光を反射する。ガラスパーティションを通して先にあるエリアを見ると、それは過去からの歩みと、これからの未来を予感させるような関係性をつくれるのではないかと考えた。この店舗では、モロゾフの歴史と未来をつなぐようなデザインを目指した。(神田亮平/Roito)