
気積の大きな4間×6間の可能性 長野県茅野市、標高1,160mに位置する夫婦と子供のための住宅。もともと畑だった敷地は南北に細長く、少し高い南側がメインの接道で東側は隣地が1~2mほど高い。その向こうには八ヶ岳の山々がそびえ、水下にあたる西側は茅野の市街地に向かって雄大な景色が広がっている。建主は植栽家・ランドスケープデザイナー(hondaGREEN/本田浩氏)で、庭と建物の連続性をテーマにこれまでにさまざまな建築家との協働も行ってきた。鎌倉からのIターンであり、自らの庭をつくれることと、この景色に惹かれて移住を決意した。今回の建物は「2」とあるように、長野県松本市に設計した「ペッタンコハウス」(本誌1605)をベースとしている。ペッタンコハウスは地元のカラマツ材で構造材、外壁材、床材、副資材を賄い、更に規格の長さの4mから建物高さや登り梁の接合箇所等を決定したので「木取りを知るフォルム(つまりペッタンコ)」と呼ぶようになった。今回の計画では庭と建物の配置関係が重要であり、最終的にはやや窪んでいる敷地の北側を庭、南側を建物とすることにした。すると必然的に建物の北側に居間を配することとなり、そこへも光を届けられるドーマーや、厳しい寒さに対して外壁面積を少なくすることが有効であるため、「ペッタンコハウス」をベースに設計を進めた。ほかにも汎用性の高さとローコストを実現した最初の「ペッタンコハウス」の建築的な特徴を守るために5つの原則を設けた。 1.平面は4間×6間。 2.長手の中央を棟とする切妻屋根。 3.屋根には大きなドーマー。 4.長手の中央2間を2階とする。 5.ペッタンコであること。 以上の条件を踏まえたうえで、今回の敷地条件と建主の要望から、雨除けのある作業スペースと居間から続く半屋外空間(ウッドデッキ)を設えるために南北に軒を2間ずつ伸ばし、庭から道路側への直線的な繋がりをつくるために玄関を妻入りから平入とした。