晴れ着の丸昌 横浜店

ビルディングタイプ
アパレル・雑貨
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85
日本 神奈川県

DATA

CREDIT

  • 設計
    堤由匡建築設計工作室
  • 担当者
    堤由匡、洪秀秀
  • 施工
    オオイバシ
  • 撮影
    広松美佐江/鋭景撮影

人生の重要な節目で身にまとう晴れ着。晴れ着の丸昌横浜店は、晴れ着を通して日本の伝統文化を後世に伝えるという使命を抱いた老舗の貸衣装店である。今回は主に列席衣装フロアをリニューアルした。式場提携店での衣装レンタルに押されがちな昨今、豊富な種類の衣装を手頃な価格で提供できるということを、空間デザインを以って広く周知させるというクライアントの強い思いがあり、またコロナの影響で「ハレの場」が萎縮することへの危機感からも、一生に一度の衣装を選ぶ場所にふさわしい格式と印象が求められた。 豊富な種類を誇るだけに展示する和服は多く、什器はシンプルに認識しやすく配置し、また圧迫感を極力減らすために什器の高さは最小限の1.8mに抑えている。メインの商品である留袖がブラケットに遮られることなく美しく連続的にディスプレイできるように、ハンガーパイプを背板ではなく底板から立ち上げた。 ミーティングスペースの間仕切りは細い格子のパーティションとし、帯にそれぞれ異なる組子細工を嵌め込んでいる。組子に使われている文様名がそのまま室名となり、九谷焼のルームサインとなる。 中央の大きな円柱はあえて積極的に見せることにし、版築を模した塗装を施し、和風の空間に調和するインパクトある存在感を付与した。トイレの壁には大谷石の馬積み、天井には艶やかなベンガラ色の和紙を貼り、重厚感のある格調高いサニタリーをデザインしている。 特筆すべき天井は、既存の天高に限りがあるゆえのアイデアだった。RC構造の梁を避けつつ、薄い木の板をわずかに高さを変えながら貼り、底目地を切ることであたかも重なっているように見せる。このアイデアは和服の襲(かさね)からヒントを得ている。古来より現代に至るまで、日本人は布を重ねることを楽しんできた。一番よく知られる事例は平安時代の十二単であろう。この時代は様々な配色の襲(かさね)を扱えることがファッションセンスの証であったという。伝統にインスパイアされた現代的な空間の中で衣装を選ぶ体験が、来たる晴れ舞台へ高揚感をより高めてくれることを望んでいる。

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物件所在地

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