
PROJECT MEMBER
岐阜県垂井町のパン屋さん(グルマン)のオーナーの二世帯住居で、グルマンの背後にある森に建つ。 オーナーとの出会いは5年前この近くに建つ息子さんの家の設計を依頼された時から始まった。 グルマンはオーナーの自身が自ら図面を描き一部、パンの森として増築し、拡張してきた。自身の社長室には製図版があるほど設計が仕事の様な状態である。 今回の計画は、共同設計のような形で計画を進めていった。 森の上にある店舗からの適度なプライバシーを維持し、森の景観と空気を最大限享受するため、軒が低く水平に広がる計画とし、店舗とのバッファーとして森側に深く長いテラスとインナーテラスを設けた。 テラスは周辺の環境により、床レベルや囲いの形式を変え、二世帯の外部空間は緩やかに繋がる。 親世帯テラスの床は地面より、40~70cm持ち上げることで、森の風景を切り取るとともに、スラブはベンチやテーブルとしても機能する。 インナーテラスはテラスとダイニングの両方をつなぎ、三世帯(近くに住む弟さん)が集まり過ごす場として計画されている。 森への風景や木漏れ日を建物中央に運び、深い軒の影を補う為、切妻頂部をずらし、建物の中心にハイサイドライトを設けた。 屋根の断面は同じ形状が25m連続するとてもシンプルな計画である。 平面は田の字型が連続するプランを基本形としながらも要望により、計画的な、構造的な合理性からは遠ざかった少し乱れたプランをとなっている。 このズレがハイサイドライトからの距離を作り、光を奥の部屋に届けたり、壁がリフレクターになったり、内部で多様な光の状態を生み出している。 森に建つ環境を生かしてシンプルな骨格を設定し、要望によるズレを受け止める、寛容で大らかな住宅となった。