小杉湯となり

ビルディングタイプ
複合施設
4
247
日本 東京都

PROJECT MEMBER

DATA

CREDIT

  • 設計
    T/H
  • 担当者
    樋口耕介 / 瀧翠
  • 施工
    まつもとコーポレーション
  • 構造設計
    TECTONICA
  • 撮影
    Katsuhisa Kida / FOTOTECA
  • 企画・運営
    銭湯ぐらし

上空があるような 銭湯に独特な環境のあり方を展開し 「環境に属する」というコミュニティの作り方を実践する 昭和8年から続く老舗の銭湯、小杉湯。その隣で、銭湯のある暮らしを提供する施設である。銭湯には、「人と話さなくてもいいけど、人とつながれる」、会話を前提としない静かなコミュニティがある。それは「ある集団に属する」というよりも、人々の営みが織り込まれた「環境に属する」といった感覚であり、その環境が小杉湯においては、男湯と女湯にまたがって架かる大きな越屋根によって生まれる上空にあって、太陽の光を取込み、風が抜け、くぐもった湯気が立ち込め、匂いを溶かし、音を響かせている。室内だけど上空があるような、この独特な環境のあり方を展開して、銭湯的なコミュニティを拡張したいと考えた。 3階建ての建物を小さく切り分けるように、階と階の間を半透明な層として、外部環境を取り込む。直接、あるいは庇に反射して取り込まれた光が層の中で拡散を繰り返して柔らかさを湛え、メッシュの膜を通して室内に落ちてくる。1階は南側の強い光を庭の紅葉の葉の輪郭と共に天井の膜に写し取り、2階は穏やかな北側の光で満たされている。膜は見上げる角度によって空が見えたり、湯気のようにくぐもったりしている。南北の風が半透明な層を通り抜け、熱を奪いながら膜を介して室内の空気を優しく動かす。音や匂いが薄い床を通して人の気配をそれとなく伝える。人々の暮らしの上には、ゆらぎ、うつろう環境が広がっている。 各階はシンプルなワンルームとして、食事をしたり、畳で寛いだり、寝室としたりできるが、その地上の様相は時代やニーズが変われば変わっていくだろう。しかし上空の環境は変わらない。銭湯には中普請という仕組みがあり、建物の小屋は変わらずに、浴槽や設備など地上部分だけを時代に 合わせて変えていくことで、100 年近く残ってきた。変わるものと変わらないもの、その2 つが同居する場所が銭湯的だとして目指した場所である。

物件所在地

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