
昔の日本の住宅は部屋が襖などで簡易的に仕切られており、それを開けたり時には外すことにより一体化した空間に一瞬としてなることができた。そこにはプライバシーという概念はあまりなく、その後敬遠され壁で空間を仕切る住宅が増えていった。しかし、近年未曾有のウイルスのパンデミックにより、ステイホームでの在宅ワークや在宅学習がふえた。そこで昔の日本の住宅を改めて考えてみた。襖は外せば壁がなくなると言っていい。そこで今回の世田谷の築20年のマンションのリノベーションプロジェクトの壁はガラスを基本とした。ワークスペースはガラスで仕切られているものの完全な個室になっており音の問題もクリアしている。ワークスペースの間仕切り壁がガラスになることにより外の光が室内の奥深くまで入るようになている。廊下とダイニングとの仕切りの壁もガラスでできており、どの場所にいても室内は一望できる。昔の日本の家のプライバシーのない解放感は家族との距離を縮め、その後の日本の家の壁で仕切る空間が家族の距離を遠ざけたたのかもしれない。しかし、それによりプライバシーが保てているのも事実である。そこで今回のプロジェクトでどちらの長所を引き出せた空間つくりができたように思う。建築家それぞれがプライバシーの曖昧さを過去の住宅を再考しなおし、新しい空間を提案して言いたいと思う。(殿村明彦)
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