
長野県軽井沢のラウンドアバウト(六本辻)に面する建物のコンバージョンとフォリー(あずまや)の増築プロジェクト。コンバージョンは飲食店だった建物をフレキシブルなワークスタイルに対応するワーケーションオフィスへと変更。緑豊かな木々に囲まれた敷地は約311坪で、既存建物の延床面積は約83坪。建物形状はラウンドアバウトを背に平屋部分と2階部分がV字のように繋がる。1Fはエントランスホールを挟むかたちで50~60㎡ほどのSiteと呼ぶワークスペースが2つと、水回りやカフェを配置。また既存計画ではラウンドアバウト側に勝手口やサービスエリアを設けて閉じていたが、今回の計画では狭いながらも開口を設けることで、エントランスホールを風と光が通りぬけるスペースとした。また交通量のあるラウンドアバウト側にカフェテラスを設けることで、コマーシャル力のあるファサードをつくりだしている。2階は柱・梁・壁の構造補強を行い広々とした60㎡ほどのワンルームのSiteとし、更に開口部の増設や拡張によって敷地内の緑が溢れる空間とした。この3つのSiteにはそれぞれ特徴があり、Site1は平面的な細長比が小さいことからセミナー開催に適し、Site2は3面開口からの自然光によりリラックスしたスモールグループワークが行え、Site3は2階という立地から物理的により高いセキュリティを確保している。企業に対しての短中長期の1棟貸しや部屋貸し、それらの利用が無い時の個人貸し利用を想定する中で、多様なニーズに応えると共に、自分の居場所を見つけられるような空間づくりを行った。 コンバージョンならではの工夫としては、ケーブルラックを兼ねた長押を新たに設けることで、既存壁を壊さずに新規の照明器具やプロジェクター等を配線できる仕組みとした。またその長押に呼応させる形で縦枠も設け、プロジェクターを投射する壁や、ホワイトボード壁などオフィスユースの機能をインテリア化させている。既存の外壁は一部に鏡や擬石が大胆に張られ時代を感じさせる仕上げであったため、その多くを周囲の緑が映えるグレーに塗装した杉板張りで被いかぶせた。外構においては動線の整備を行い、施設のアイコンとなる白樺を中心に地域に則した植栽を増やす計画とした。その外構の一部に、休憩スペースとしてのフォリーを増築した。フォリーは屋根や庇や壁を兼ねた角度が異なる6枚のサーフェスから構成されている。フロアレベルは2つあり、低い方は斜め壁を背に段差を利用して大きなベンチのように座れ、高い方は足を投げ出して縁側のように開放的に座れる。またこのフォリーは通りからも見える位置に配置することにより軽井沢という厳しい景観規制のなかで、生まれ変わった施設の「何も書かないビルボード」としての役割も果たす。