
「MERCURE KYOTO STATION」は、弊社が携わるメルキュールブランドとしては銀座に続いて2棟目となり、京都史上最も華やいだといわれるおよそ1200年前、都(=平安京)の跡地にて計画された。その昔都では、隆盛を極めた貴族によって数々の“遊び”が生み出された。平安貴族にとって“遊び”は単なる娯楽にとどまらず、各々の品位を高める目的として親しまれていき、今を生きる日本文化にも深く根差している。当プロジェクトでは、伝統文化の継承に厳格である一方、常に新しいものを模索し続ける京都の地ならではの ”平安貴族の遊び“ をデザインコンセプトに、ストーリーの構築を行う事とした。 まず計画地が2つのストリートに面する事から、油小路通りにはホテルエントランス、堀川通りにはダイニングの顔をそれぞれ設ける配置から行った。 メインロビーでは、折り紙で作られた”蹴鞠”をモチーフにした手漉き和紙のインスタレーションが展開され、正面のデザインウォールは、ガラス作家により丁寧に作られた吹きガラスの球体で構成し、LEDを内照させた。色彩豊かなデザインウォールは、旅の始まりを華やかに象徴しており、吹き抜けを通して地階まで続いている。地下のラウンジスペースでは、ミーティングやコワーキング、イベントなど、多用途に付加価値を生む環境を設えた。 地元の素材・エッセンスをメニューに取り入れたビストロダイニング「Trattoria M Kyoto」では、ゲストの目を惹くピザオーブンやグリドルをメインとしたライブキッチンのみならず、平安絵巻や百人一首、着物など、“貴族の遊び”を現代的に解釈したアートを点在させ、独創性溢れる空間を創出した。隣接するバリスタ&バーでは、“曲水の宴”をコンセプトに据え、エントランス扉を始め、カウンターの版築壁や苔壁など、平安時代に貴族の宴の場となった庭園の小川をイメージし、現代における新たな宴の場をデザインした。 ゲストルームにおいては、低層階のスーペリアフロアは“投扇興”、高層階のプリヴィレッジフロアは“独楽遊び”をアイコンに据え、壁面やカーペット、家具などのアイテム一つ一つに対してクリエイティブな手法で置き換えていき、快適さと遊び心を共存させた。 インバウンド需要で急増していく京都の宿泊施設の中で、土地に根付いた歴史・特性を最大限活かしたこのホテルが、常に進化し続ける京都ならではのクリエイティビティと出会える施設となる事を期待している。