
敷地は、大阪市内の私鉄沿線に拡がる比較的低層な戸建住宅地に位置する。東側と南側には住宅が隣接し視界•採光を遮る一方、北側には緑豊かな公園に面し明るく開けた見晴らしが展開している。ここでは、この恵まれた周辺環境を如何にして生活空間に取り込み、さらに新しい街並みとして提示できるかが大きなテーマとなった。1階には寝室等のプライベート諸室を、2階にはリビング・ダイニング・キッチンとそれを取り巻くテラスを公園を見下ろす形で配置し、これら諸室のみならずアプローチを兼ねた駐車スペースをも覆う鉄骨による大きく軽やかな屋根を架けることとした。この大きな軒下空間は、テラスや2層のボリュームを持つ駐車スペースなどの半外部空間を介して外部と内部空間の連続性をつくり出すと同時に、住宅の一部とも街並の一部とも呼びうる公共性の高いセミパブリック空間をつくり出すことに成功した。道路側や隣接する住宅側に対して、視線を遮るべく適度に配置した壁、2階のリビング空間からの公園側への開放、そしてこれらを包む大きな屋根、ここで試みたこの3つの手法によって、この周辺環境を最大限に取り込んだ、豊かな住処と新しい街並みを創出できたと考えている。
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