




京都市内にある木工と漆の工芸作家ご夫婦のための工房住宅である。 クライアントと土地探しからはじめて、数年にわたり何箇所かの候補地で検討をくりかえしながら、最終的にクライアントにより見つけられたのは市街地近くにも関わらず静かで緑の多い場所で、北側には筍畑のために整備された気持ちの良い竹林があり、素晴らしい借景が期待できる敷地であった。 しかしこの敷地はの大半は土砂災害特別警戒区域に含まれる事や、京都市の景観条例等多くの建築的規制があり、大きな予条件となった。私達はこれらの規制をネガティブなだけの受け止めではなく、逆に、工房住宅が故の要望や周囲の景観条件と上手く組合せる事でこの風景にふさわしい、クライアント夫妻の生活スタイルに合った職住一体の暮らしを静かに、快適に過ごせる家ができるのではないかと考えた。 敷地面積から急勾配の崖と、条例からくる敷地境界からのセットバック分を除くと、住宅の配置計画はほぼ決まってしまう。更に土砂崩れが想定される南面(道路側)と東面のGL+1.7m以下には厚さ250mmのRCで造る土砂の待受擁壁が必要であり、その部分には開口が開けられない。 そこで、この条件を逆手にとり、クライアントが見出した北側の素晴らしい竹林と、南、東側に必要になる待受擁壁を組み合わせ、最大限活かす事を考えた。 まず、容積率を最大限使い切る3階建てとして、建物を東側に寄せ西側を大きく空ける配置計画とし、1階に開口可能な土砂が来ない西側に玄関を配置した。これにより、玄関へのアプローチのために門扉を開けると正面に竹林が広がる計画としている。 また、1階の漆工房は安定的な採光が得られる北側に大きく開口を設け、明るい竹林を眺めながら作業ができる空間とした。次に、木工室である。この工房は工程によっては大きな音が出る。1階南と東面の待受擁壁自体を外壁の一部として1階の最深部、RC壁2面に囲まれた位置に木工室を配置しRCの防音効果を利用した。更に、待受擁壁によって限られた開口となった玄関ホール、階段スペースはは、照明でコントロール出来るギャラリーとした。 生活の中心となる台所と食堂は2階北よりに配置、吹抜け空間として竹林に向けて大きく開き、南からの日を受けて明るく照らされる竹や木々が見える気持ちの良い景観の中で過ごせる開放的な空間とした。吹抜けに面した3階寝室、ホールからも竹林が見える。 市街地近くにも関わらず、森の中でひっそりと佇む、ものづくりに没頭できるような静かな住宅となったのではないだろうか。
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