
クライアントにとって、新しく暮らす土地、新しいコミュニティ、そして開かれた敷地での住まい方を考えた木造平屋のコートハウスである。 東西の2方向接道で敷地GLと道路レベルが近い、通行者との距離がとても近い敷地である。 これは本プロジェクトで前提条件であるバリアフリー要件を満たすために探し出された敷地であり、その条件で見いだされた敷地特性、平屋計画である。 この場所で、新しい地域コミュニティとの関係を構築しながら、プライバシーにも配慮した上で外部空間を生活に目一杯取り込める家を目指した。 上記の目的のために我々が提案したのは、U字型のプランのコートハウスである。 中央の庭の周りをポーチ→玄関+客間→居間→食堂→個室と一方通行で主要な生活空間はパブリックからプライベートな空間へとグラデーションのように連続的に変化していく。 この変化に応じて、各空間で庭への開口方法を調整していく。 例えば、パブリックな客をもてなす空間の玄関土間や和室では、庭に対して、土間付近の足元とハイサイド部分のみの開口のみとした。そうすることで、パブリックな玄関でも庭を楽しみながら居間でのプライバシーを阻害することはなく、同じ庭を楽しみながらもお互い違う空間を活用出来る。さらに、居間まで招く来客があった場合でもU字プランの最深部である西側の個室エリアを仕切る事で、水回り等も属す独立したプライバシー空間と出来る。 架構は木造在来軸組工法の最も単純な切妻屋根及び、片流れとして、コスト合理性を測りながら景観条例がある国道307号からの見え掛かり、及び、ほど近い史跡である紫香楽宮跡にも配慮し極力低い建物としている。 内観は小屋組みの垂木を現しとし、まるでパブリックからプライベートへ深まっていく目盛のように、同一リズムで空間を奥に向けて刻んで行く。 自然を取り込みながら、他者と、また家族同士、丁度よい距離と出来るような、また、地域の風景に馴染む住まい造りを意図している。