西福間の境界

 海好きのご夫婦、子ども、うさぎの4人家族の為の新築住宅である。敷地は、海水浴で賑わう海岸から直線距離にしてわずか150mの位置にある、昔ながらの低層住宅街の一角にある。このように豊かな環境である一方、宿命とも言える塩害や強風への対処に加え、要望であるプライバシーを確保しつつ、新しい刺激を与えつつも街並みに寄り添う形態の追求および豊かな内部空間の創造を目指した。  敷地は、境界すべてが道路または水路であり、まるで『陸の孤島』のような極めて珍しい状況であった。これにより、民法上の境界離隔を必要とせず、敷地境界直上まで建築することで敷地全体を住戸の延長として最大限利用できる。このユニークな敷地への回答および冒頭の命題に対するアイデアとして『境界壁』を発案した。  この『境界壁』は単なる工作物ではなく、住戸と一体化した建築物である。境界壁は様々な意味合いを持つ。例えば、塩害や強風から住まいを守る『防風壁』であり、母屋との接続部では構造上の『耐力壁』であり、ルーバー部では、採光や通風、視線の広がりの為の『柵』として機能する。また、敷地境界に沿って一筆書き状に延びる境界壁を、場所ごとに面や格子といった形態や、高さ、仕上を変化させることで、プライバシーのコントロールや街に対しての圧迫感の軽減といった、住戸と周辺環境との関係性を調整した。  母屋は、コストを考慮しモジュールによる単純な矩形ボリュームとしたが、不整形な境界壁によって生まれるいくつもの「隙間=庭」によって内部では多様な広がりが生まれ、矩形プランでありながらも変化に富む豊かな内部空間が実現できた。

チーム

メンバー

クレジット

  • 設計
    ノットイコール一級建築士事務所
  • 施工
    久木原工務店、植栽:小山千緑園 青木節子、サポート:フォルツァ 青木徹也
  • 撮影
    岡本公二

データ