
これは築約60年の住宅の改修プロジェクトです。 かつて家族5人で賑やかだった家は、現在は子育てを終えた夫婦2人だけとなりました。 和歌山の広い敷地に建つこの家は、建物の周囲を庭がぐるりと囲います。 60年前は田畑しかなかったまちの景色はここ数十年で大きく変化しましたが、この庭は変わらず、住む者に四季の移ろいを感じさせてくれます。 変わるまち。変化する家族のかたち。変わらない庭。 庭に面した出隅部の壁をガラスの開口に変更し、室内から広く庭を見渡せるようにすることで、ここで始まる夫婦2人の新たな暮らしを、家族で慣れ親しんだ景色が包んでくれるものとしました。 また、夫婦2人には多すぎるたくさんの部屋は、部屋間の間仕切壁と低い天井を取り払い、リビングダイニングキッチンをひとつながりの大きな空間にすることで、夫婦ふたりがゆったりと贅沢に使える場所とするとともに、人が集った時も心地よく感じられる、おおらかな場所としました。 間仕切壁を取り払った、天井の高いリビングダイニングは、表の庭から裏の庭まで風が通り抜け、日本の住宅の本来の良さを発揮します。 色褪せ汚れてもなお愛着のある建具や内装は、活かせるものはそのままにし、適宜更新させています。 過去の記憶を繋ぎながら、年老いていく夫婦が未来に新しい思い出をつくってゆけるよう願いを込めました。
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