カモ井加工紙第二製造工場倉庫

ビルディングタイプ
工場・倉庫

PROJECT MEMBER

DATA

CREDIT

  • 設計
    TNA 構造設計 / 満田衛資構造計画研究所
  • 担当者
    武井誠、鍋島千恵、塩入勇生、綾城圭
  • 施工
    藤木工務店
  • 撮影
    阿野太一

工場には独特の反復がある。工場特有の切妻、門型の構造、波板スレートやコンクリートブロックといった素材、そして製造機械や棚、段ボール。それは大量生産を目的とする場所にとってごく自然な状態である。それらの集まりが工場の特有の風景を作りだしているわけであるが、周囲に広がる住宅地の近さと、搬出入や工場見学の際に通行する大型車両用の少し広めの通路、解体された機械の基礎が残る空地などの関係性をみていると、敷地が小さな街のように見えてくる。 昨年完成した第三撹拌工場史料館は、一階の多目的に使用できる広場のようなピロティと、社史を保存する屋根裏部屋のような史料室とを、建物が稼働していた当時の姿の小さな吹き抜けが繋いでいる。私たちはこの建物をきっかけとして閉ざされた工場を敷地の奥から周辺へ開こうと考えた。史料館の隣に荷物置場になっていた切妻屋根の大きな製造工場が建っている。そこには最小限の寸法の部材で組み合わされた鉄骨断面の軽やかな門型の骨格の反復によってできた魅力的な大空間があった。その巨大な余白空間に挿入された非対称の大きな吹き抜けは、事務、軽作業、休憩、荷解きといった場所をつくりながら、荷物置場が最大になるように決められた。 史料館の吹抜けと同じ高さにある新しい吹き抜けは空間を区切るだけでなく、設備や耐震補強といった人の居場所を支える機能が凝縮されている。不均質で明るい活動の場所をつくると同時に、古い工場の壮大な景色を標本のように切り取る大きな額縁でもある。小さな白い段ボールが整然と並んだ倉庫は、複層のポリカーボネート壁に滲む工場の風景によって明るく照らされ、外部のような環境を獲得する。昼は、空や山並み、住宅地や周辺の風景が倉庫の外壁に映り込み、夜にはぼんやりとした明かりと共に、内部の活動が外に漏れ出し街の暗闇をほのかに照らす。それは反復を超えた繊細な工場の新しい風景の始まりなのだ。

TAGS

7
7