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ビルディングタイプ
カフェ

DATA

CREDIT

  • 設計
    牧野恭久建築設計事務所
  • 担当者
    牧野恭久
  • 施工
    相川スリーエフ 阿部倉祐樹
  • 構造設計
    清水構造計画 清水靖真
  • 撮影
    鳥村鋼一

「神田珈琲園」は神田駅高架下にて1957年から営業を続けている歴史のある純喫茶である。 鉄道高架橋躯体をそのまま利用した2階建ての従前店舗は、2018年高架橋躯体老朽化による耐震補強工事に伴い解体。 同じ高架下の店舗が次々と閉店や移転を決める中、地権者との交渉により同じ場所での再開は可能となったが、耐震補強をした高架橋躯体には接触せず完全に切り離した建築を入れ子状に新築することが求められた。 前面道路以外は高架橋躯体に囲われ、GLから高架橋躯体までの高さはわずか4.68m、地盤下には高架の大きなフーチングが拡がっているという特殊な条件のもと、施工方法を検討しながらの設計を進めた。 構造は100m×100mのH鋼のみで構成した門型のフレームを人力で支えられるサイズに分け、敷地奥から順々に据付ける計画としている。 門型フレームの桁行スパンは1.7mとし、敷地内高架橋躯体を避けるだけでなく、客席の最小単位寸法として設定している。内部で表しとなった構造フレームと鉄骨高架橋を模したブレースは、パーティションのように扱うことで、一つの空間の中に質の異なる居場所を作っている。 4.68mの高さで屋根仕上げまで施工可能な寸法として階高は1,2F共2.1mに設定。 2F床は100mmのH鋼梁内にデッキスラブを納めた極薄のスラブとし、部分的に吹抜けや勾配天井を利用することで建築基準法上必要となる2.1mの天井高さを確保、従前と同じ2F建てを実現した。 60年に渡り長く愛されてきた神田珈琲園を同じ場所で「再生」する意味として、神田駅前の街並みを構成していたファサードは従前のプロポーション・素材を継承するように努めた。 一方、内部に入ると従前を思い出させる床のタイルや馴染みのある色彩を使いながらも、規則性のある門型のスチールのフレームやデッキスラブ、押出し成形セメント板という新しい要素で空間が構成されており、そこに長年使用されていた椅子とテーブルを並べている。 店舗設計でありながら過剰な表現や模造品の使用は避け、素朴で普遍性のある建築を目指した。 これらは全て変化の激しいこの場所に、60年後も存在し続けるというクライアントの強い意思に応えるものである。

物件所在地

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