カラー専門店はヘアーサロンの中でもカラーリングに特化し、白髪染めや生え際のリタッチなどが主なメニューとなる。カラーの施術を求め、質はもちろん安さと早さが必要不可欠でありこれからのチェーン展開を視野に入れた一号店のお店となる。 以上の点から設計自体もシステム的に機械化する必要があるのではないかと考えた。 どの土地でも馴染むように、しかしその場その場の個性も出していきたい。設計段階で工程はシンプルにしなければ限られた予算という課題はクリアできない。 たくさんの課題をクライアントとディレクターの三者で何度か協議を重ねる中、店名のカラースタンドの中にヒントは埋まっていた。 コンセプトは ”ガソリンスタンドのようなカラー専門店” ガソリンスタンドの給油する機械のように、機能をひとつにまとめ装置化する事でスペースは無駄なく最小化され、動線もよりシンプルにすることが可能になるのではないだろうか? カラースタンド什器は空間内に三台斜めに振られ、等間隔に置かれた。その背面から信号機のように片持ちで楕円形のミラーが飛び出し、 そのミラーを中心にカラフルなサロンチェアが対称に配置される。 エントランスからはミラーが斜めに振られた事で、一瞬の間視認する事ができず、木でできた個体がモノリスのように等間隔で配置された風景は、これまでのサロンにはない、まるで遺跡のような厳かさとガソリンスタンドのような手軽さを兼ね備えた空間へと生まれ変わった。 設計のプロセスにおいても通常の空間全体を立体的に機能を落とし込みデザインするのではなく、”点と景”の二つの視点で空間を切り分けて考えている。 “点”はここでは機能の事であり、全ての機能を一度細分化したのち集約し、スタンドの塊として捉え、それぞれの集約した作業を完遂する機械を作るように綿密に設計した。 “景”は空間のことであり、空間を解体する事であらわれた躯体を仕上として見せるように考えた。既存の躯体の個性を利用する事で、その場所にしか生まれない遊びを空間に設け、 それがコストカットとクリエィティブを両立させるように考えている。 これから展開を広げていくことで、 “景”である解体された空間はそれぞれの場所で躯体や仕様も異なりそこにしかない個性が生まれる、 逆に綿密に設計された”点”である多機能スタンドはどこの場所でも同じものを取り入れる。 “点”がスタンド什器として一様に生産され お客様は第一に安く、そして気軽に、”景”それぞれが解体される事で個性を持って生まれるという、通常の点と景の意味とは逆転の現象が起きる事となる。 これまでのオーダーメイドのような手法でオーナーのこだわりを丁寧に体現してきた経験を踏まえて作るユニバーサルに展開できる空間デザインのシステム。 この手法でこれから様々な街に誰もが気軽に寄れるその場所にしかできないスタンダードなカラースタンドが生まれ増えていってくれることを願っている。
