
世界中の希少な時計を集めた専門店の計画。 敷地は様々な店舗が賑わう東京、新宿の古いテナントビルで1F:売場、2F:買取カウンターの2フロアからなる。 狭い間口と通りから奥まった入口、決して広いとは言えない店内にて希少な商品との出会いに相応しい場が求められた。 まず奥まった店内入口に何も機能を持たない空間を設けた。 これは神社における参道のように内部空間への期待感を高めると共に非日常性を高めることを意図している。 店内は荒々しい既存のコンクリート躯体は覆い隠すのではなく、一部欠損部分に金つぎを施しそのまま利用することで古いものに新たな価値を与えた。 そしてその躯体空間に売場の床、交渉ブースやショーケースとった機能を躯体と相反する素材を用いて配置していった。 古材木のフローリングの床は希少な商品との出会いのステージとして空間に浮かべた。 ステンレスでできたショーケースは堅牢な金庫のような表情を持たせることで商品の稀少性をより際立たせている。 また時計のディスプレイ台は天然の石を未加工のまま利用することで石本来の持つ自然の美しさとの対比によって、高度な職人技術の結晶とも言える腕時計の人工の美しさの魅力を高めることを考えた。 これらの商品は交渉ブースに持ち込みじっくりと吟味することができる。 白いスチールとプラスチックによって仕上げられたニュートラルな空間は天井からの均質な光によって主役である商品の詳細を浮き上がらせることでより集中して商品と向き合うことができる。 様々なマテリアルの強いコントラストによってそれぞれの空間を独立して浮かび上がらせる。 そしてそれらの”空間”体験を通して”時間”という概念との関わりを感じさせる。 希少な時計との出会いの場としてそんな場所をつくりたいと考えた。