石巻の東屋

ビルディングタイプ
その他公共施設

DATA

CREDIT

  • 設計
    萬代基介建築設計事務所 ランドスケープ基本設計:風景屋 ランドスケープ実施設計:建設環境研究所
  • 担当者
    萬代基介、板谷優志
  • 施工
    東屋h:東北建商 東屋i:今野工務店
  • 構造設計
    佐藤淳構造設計事務所
  • 撮影
    萬代基介建築設計事務所

8kmの小さな建築 宮城県石巻の市街地を流れる旧北上川の両岸に、津波対策で新しく建造される総長約8kmの河川堤防の上に作る小さな東屋群の計画。それは、川と街の境界に作られる大きな堤防に小さな「窓」をつけていくような設計であった。震災後遠くなってしまった川と街に丁寧に「窓」を開けて、川と街を繋ぐ人の居場所を作っていく。 小さな建築であれば、使う人が全体を独り占めして自分のものと感じるような特有の贅沢さがある。その「占有感」を加速させるために、建つ場所の特性を出来るだけ最大化させるような設計とした。例えば食事をすることが多い場所に建つ東屋には建築に比して大きなテーブルをつくり、その人だけの贅沢な食事の場所を作り出す。場所の個性と小さな建築を組み合わせ、震災が作り出した大きな風景の中に人の居場所をつくり出していく。 場所による固有性とともに、全体の繋がりを暗示するものとして、共通する素材や工法を取り入れた。75mm幅の垂木や木製柱である。もともと川の護岸は石積みの護岸で作られていて、大きなスケールの一体的な風景が小さなもの集合でできているという土木の言語があった。そういう美しさが堤防の上に建つ建築としてはふさわしいと考えた。さらに建築の形は、堤防の土手勾配に沿うような片流れの屋根を基本形とした上で、川の蛇行/堤防のスロープ/見える風景など大きなランドスケープとの関係を生み出すように場所に合わせて変形させていった。 小さな固有性の束が、川や堤防と一体になって8kmの大きな建築となり、再び人間と自然をつなぐ場所となることを願っている。

物件所在地

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