




敷地は広島市内の丘陵地を開いた住宅団地の一角にあり、古くからの宅地を南北に二分する形で売りに出されていた分譲地である。 かつては月見山と呼ばれ平清盛もよく月見の宴を催したと言われているが、今は住宅団地となり眼下の工業地帯にその地名を残す のみとなっている。 もはやかつての山は面影もないが、遠くに見える海田湾や山々に変わりはない。それらの環境を身近に感じながらも自らの暮らしに 合わせて開拓していける、地形のような住まいをつくりたいと思った。 施主は夫婦と子供二人の4人家族である。東西に細長い敷地形状に、南北側はギリギリまで建物が迫っている中で、家族が過ごす環境を どう確保するかが課題であった。 敷地の条件から、南北に対してはどうしても閉じざるをえず、また西側は道路、東側も隣地の住宅があり開口の位置に制限が多い。 これではアウトドアや登山が好きなアクティブなこの家族には窮屈だ。 そこで、大きな階段によって生活空間を2階に持ち上げ、南の ハイサイドと東西の窓によって抜けをつくることにした。2階であれば東に海が見える。西道路側には、空中に浮かんだテラスも設けた。 大階段は幅を1間とし、横には段々に踊り場を設けることで、単なる通路以上の居場所になっている。 腰掛けると小さな庭越しに海の方へと視線が向く。 1階は水回りと廊下、そして階段下に部屋がある。玄関を入ると長い廊下が建物の突き当たりまで続いており、大階段の真下の部屋は 段板の間から光が漏れている。廊下の突き当たりを振り向くと2階へと吹き抜けた明るい場所にたどり着く。 やや暗めの廊下から明るく開けた階段へ出て、景色が良い2階リビングへ登る。途中には子供達の成長に応じて設えが変わっていく 踊り場がある。空中テラスから道路越しに、挨拶をする。これらをめぐるシークエンスは山歩きをしている感覚と近いような気がする。 大階段から連なる2階リビングはさながら地形のようである。 かつて平清盛がどこで月を見ようかと、山の中を歩き回ったように、家族の各々が好きな場所をみつけ、住まいを発展させながら 暮らしていってくれることを願う。

