
香川県高松市の郊外からさらに車を走らせると桃源郷のような場所が突如あらわれる。元々素麵屋を営んでいたこの場所は、遠くの山々や眼下の池があり遠くとなく近くとなく様々な距離の出来事が重なるようなところである。この場所で本能的な自由さを感じられ、人と環境のつながりが広がっていくようなきっかけを考えた。そして多様な空間特性が総合的に組み立てられ、その環境を媒介にして、人と人、あるいは人と物との出会いが生まれるような場所が出来ればと思い想像を膨らませる。 建物は敷地の端に寄せ素麺屋との間に大きな広場をつくる。細長い切妻屋根の建物は一つの建物だけど、それぞれの商いは程よい距離感で離れている。この中には形態、素材、スケールの多様性とそれらを結びつける秩序を用意した。個々それぞれが強く引き付けられる部分や全体を発見し、それを共有する人の存在にふと気づくようなあいまいな場所をつくる。そこに腰掛ける大人がいれば、走りまわる子供たちもいる。身体と環境との距離の取り方は自由である。半透明な屋根から落ちてくる光、内なのか外なのかあいまいな場所の雨や風、どこからか聞こえる水の音などが建物に深みのある表情を与え、その場所に特別な景観をつくり出す。 建築の設計は、世界観、人生観にはじまる。それを姿形あるものに表現しなければならない。通常の平面や立面だけではない。肌でふれ見たり聞いたりする素材をその姿に頼る他あるまい。 キラキラ、しとしと、そよそよ、ゴツゴツ、ウネウネ、ザラザラ、さらさら、、、
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