
PROJECT MEMBER
これは北京デザインウィーク「建築×アート」展のためのインスタレーションである。槐谷林芸術センターは中国随一の芸術文化区域である宋庄村に位置する。北京市以外で選ばれた唯一のイベント会場である。その一画に、宿泊機能を伴った詩的空間をデザインした。 短期滞在する芸術家のために宿泊機能が新たに追加された。下階エントランスから続く階段を天井まで延長させ、その表面に中国人書家の孫初氏による「流転楼梯」が描かれた。白糸の滝の如く流れるストライプ状の滴りが、天井のチタンに映り天地反転する。 コンテナが積層した既存建築に従い、2つの白いコンテナを並置した。宿泊棟に南接するアトリエ棟は、創作と展示を兼ねる。二つのトップライトから入る自然光は、空間に膨張と収縮をもたらす。空の彩度や光の密度に敏感に反応し、内向的な空間は劇的な変化を孕む。灰色のグラデーションに陰りながらも、瞬時に強烈なコントラストを生み出す。 さらにその南側に、光のトンネルを置いた。自主創作と鍛錬に励む芸術家が精神を落ち着かせ、感覚を研ぎ澄ますための空間である。12mの壁面に穿たれたスリットからは鋭い光が射し、仄暗い陰影を切り裂く。季節の変化や自然現象に呼応し、筒状の空間は様々な表情を見せる。 西側開口からは、宋庄の長閑な風景を眼下に臨む。東側の壇上には漆黒の水盤が湛えられており、その先に広がる樹々の風景を反転させる。水に透過した光線は屈折し、ゆらめきながら筒内を回遊する。小さな落葉や風に揺れていた水面は、やがて鏡のように静まりかえる。 白い輪郭は空や緑に映え、鮮やかな対比をなす。徐々にその境界線は曖昧となり、薄暮に沈んでいく。夜、間接光が内部を照らし、内外反転した空間が静寂の闇に浮かび上がる。光と闇・天と地・内と外、そして世界と自分を意識することのできる空間となった。