懐石ダイニング MEE

ビルディングタイプ
レストラン
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PROJECT MEMBER

DATA

CREDIT

  • 設計
    JAM
  • 担当者
    村田純
  • 施工
    上海普雅建築装飾工程
  • 撮影
    JAM

複合アートセンター「船厰1862」は、150年の歴史を持つ造船工場であり、上海浦東新区の中心的な役割を担う。周辺は金融の中心地として急速な発展を遂げており、外資系企業をはじめ、高級ホテルやアパートメントが立ち並ぶ。この建築の1階、対岸の外灘(Bund)を眺める一画に計画された懐石料理店である。 店は多角形平面の複雑な形をしており、巨大な吹き抜けを持つコンコースに面している。 さらに、河岸側と施設側の2本のアプローチ、2カ所の裏動線がつながっており、異形の平面をさらに込み入った状況にしていた。 立地の性質上、商談やミーティングを兼ねた利用が想定されており、高度なプライバシーとホスピタリティを提供することが要求された。  まず、店の内外に景石や水景を点在させ、4つの個室は相互に一定の距離を確保しながら配置されている。エントランスの石庭は、ガラスを貫いてそのまま内部へと連続させており、河岸の遊歩道から導くようなアプローチとしている。ホールでは透明感のある翡翠石と水庭がゲストを迎え入れる。水面に揺れる松の風景、ライトアップされた石板を眺めながら、さらに奥へと誘い込まれる。 カウンター席と円卓を備えた個室は可動間仕切りにより仕切られ、用途によっては一体として使うことができる。格子窓からは黒いモノリスが敷き詰められた楓の庭が垣間見える。 奥のVIP室では、8人掛けのダイニングの奥にラウンジが併設されており、枯木と岩の庭により隔てられている。最も小さな個室では傍らに石庭を据え、水平窓からは遠くに外灘を見る。 演出的・装飾的な要素を扱いながらも、空間が散漫にならないように壁・天井の表情は控えめに設え、静謐さを纏った空間を目指した。店内の照度は最小限に抑えられ、美しい器・料理のひとつひとつに焦点を当てている。シックな空間の中で庭や植栽の存在感だけを際立たせている。 翡翠や大理石などの景石の数々、家具に使われている橡や胡桃などの銘木すべてが吟味を重ねて選定されている。 日本で調達されたアンティークの絵画や調度品・食器は、季節によって装いを一新させ、ゲストの目を楽しませる。

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