
湯布院盆地の外縁部、地形が平地から斜面に切り替わり始めた斜頸地形の場所に位置する平屋の住宅である。不整形な敷地であったが、ボリュームをずらしながら雁行配置することで、敷地にフィットした平面形状とした。屋根をかけるにあたり、周囲の景色に馴染むよう切妻屋根を採用し、一つの大きな屋根ではなく分節された屋根とすることで、建物の大きさ感を抑え、小さな家が連なっているような感覚の構成としている。外観は、屋根も壁も同一の黒の銅板素材を用いていて、建雄のそのものが一つのシルエットのような存在感を持つ。遠景に見える山並みは、夕暮れ時には暮れる日の遮光で雄大なシルエットと化すが、この住宅は風景の中でそのシルエットに連続して呼応するような建築である。リビングでは由布岳を望め、眺望が開ける北側に大きく開口を設けている。開口部の外側には広いテラスを設置し、由布岳の雄大な姿と周囲の緑を借景として感じることができる。リビング空間とテラスの風景の連続性を大切にしている。リビングは最も天井の高い場所で天井高が4100ミリメートル程有るが、和組の陸梁として梁を空間に露出して、開放感と落ち着きを併せ持つ、リズム感のある空間としている。キッチンには大空間と一体となったアイランドキッチンとしており、ダイニングテーブルと連続した配置としている。テラスには1200ミリメートル出の有る深い軒を設け、サッシは木製サッシとして、木造の構造体と馴染む柔らかい印象と断熱性を持つ開口部としている。和室はリビングから高さを一段上げて、一体であるが異なる場所として作り、格子戸によってゆるやかに仕切ることができる。洗面脱衣と浴室は、ガラス区切りながらも、一つの空間として広く感じられるようにしている。
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