
中国農村部の廃れた限界集落(空巢村)の6棟を解体して宿泊施設を新築し村を再生するプロジェクト。 集落の中に点在する形でホテルが入り込む為、当然周囲の民家との景観的な調和は求められた。地元の土を使って作る土壁は美しい。ただ、どっしりとした土壁で囲まれた空間は閉塞感があり、室内から周囲の美しい景観を満足に望むことができない。また、生活感溢れる土壁でできた集落に馴染みすぎてしまっては、旅行客の集客は望めない。 この地の豊かな自然環境を十分に享受する(開く)ことと、周辺の集落との調和(土壁で閉じる)する必要もある、相反する2つの条件が課題となった。 山肌に寄り添うように建てられた村の建築郡は等高線に沿うように様々な角度を向きながら、段々と高低さがある山あいに建てられている。各棟の距離感は比較的近いが、建物同士が正対をせず、ほとんど全ての建物が山麓に向かって良好な景観を望むことができる為、良好な住環境を生み出している。 私達はこのような各棟の魅力ある地理的特徴を拡張するのに異なる現地素材(竹、赤レンガ、岩、炭化木)を使い、大自然をめいっぱい享受できる憩いの空間(リビング)と土壁で包まれた安らぎある休息の空間を1棟の中に共存ことで、相反する2つの条件に応えている。 特に材料については、集落に馴染む様な現地素材を、各棟の特徴に合わせて使いながら、山奥であるため材料の運搬なども考慮し、可能な限り現地調達できる材料や土や石材など山の農村で手に入りやすい材料を再利用する事を考えた。そうすることで、農村の風景に馴染みながらも、各棟で特徴がる材料を内外で一体的に連続的にし、自然や風景とつながる空間と落ち着きのある溶け込んだ空間を作り出している。 また照明についても、山奥であるため、周辺環境の明かりは特になく夜は真っ暗になるため、最低限の照明で十分に明るさを感じることができる。そこでダウンライトなど空間全体を均一に明るくする照明は最低限に抑え、スタンディングライトやテーブルライトのような全方向式(360度照らす)の柔らかい傘の照明を採用し、その灯りが壁面と天井が弧を描き、つなぎ目のない仕上げ材を照らす事で、空間全体に灯りの濃淡が映し出され、部屋全体が灯りに包まれたような状態になり、より安らぎと温かみのある落ち着きのある空間を作り出している。 集落の風景に溶け込みながらも、この建築を介して以前とは一味違う山並みの美しさに出会える宿泊施設となった。