
ロードサイド店舗の新たな価値 アイウエアブランドJINSの前橋のロードサイド店舗の設計である。従来の多くのJINSショップのように駅前、街中にある都心型ではなく地域に密着した郊外型の店舗として新しいコンセプトが求められた。若い世代も多く暮らす住宅地が近接することから子供と親世代を中心にお年寄りまで誰でも立ち寄れ滞在できる公園のような場所をつくりたいと考えた。そこでメガネの販売だけでなくメガネを作っている間に休めたり、日常的に訪れる目的となるような空間やコンテンツを提案した。JINSにプロジェクトチームが立ち上がり、コンテンツについて双方で検討と議論を重ね、最終的にJINSが自社で運営する新しいベーカリーカフェ「エブリパン」が生まれ、併設されることとなった。 ロードサイド店舗の多くは1階に最も価値があり、2階が有効に使われている事例が少ない。今回、子供も安心して遊べる広場“うえひろば“を2階に計画し、歩道から“うえひろば“を立体的に繋ぐ大階段を設けた。従来のロードサイド店舗は道に面して駐車場を広くとるのが典型だが、この立体的な繋がりを切らないために、裏手にある駐車場への通路のみ敷地内に設け、ベーカリー側の外構には並木の歩道から繋がる大きな前庭を設けた。この庭に面した6連のガラス引き戸が開け放たれると、歩道から前庭、店舗、大階段、うえひろばへと続く一連の立体空間=公園を、気持ちの良い風が視線と共に吹き抜けていく。 沿道を歩くと背景にそびえる赤城山の赤茶色に似た銅板葺の四角い箱が緑豊かな芝生の庭に浮いている。エントランスから入ると店舗全体が水平垂直方向にパースペクティブに広がる。右側がJINS、左側がエブリパン、そして中央が空に抜ける大階段と”うえひろば”だ。目の前の扇型に広がる大階段は座席にもなっており、パンとコーヒーを持って自由に座れる。”うえひろば”にも前庭にも席があり、ここを訪れた人は公園のように自分の好きな場所を見つけて過ごすことができる。 また、マルシェやトークイベント、ワークショップなど様々な催事に使用できる施設とするため、販売目的以外の空間、大階段やひろばなどを積極的に取り入れたおおらかな計画となっている。 今回、郊外型ロードサイド店舗のプロトタイプとして計画した。ここで試されたことがさらに発展し、様々な地域に今後展開されることを期待している。