OMO5沖縄那覇

ビルディングタイプ
ホテル

DATA

CREDIT

  • 設計
    佐々木達郎建築設計事務所(内外装)、ランドスケープ:PLAT DESIGN、照明:ICE都市環境照明研究所、家具:TIME&STYLE、サイン:OUTSIGHT GRAPHICS
  • 担当者
    佐々木達郎、田上拓*(*は元所員)
  • 施工
    五洋建設
  • 撮影
    Nacasa & Partners

『地域に潜む文化と出会う』 このホテルは、那覇という都市のローカルな魅力を楽しむため、星野リゾートが運営する都市観光ホテルである。同じ価値を提供する画一的なブランド展開とは異なり、その地域独自の人や文化と協働しながら地域の魅力を表出する媒体としてのホテルを目指している。国道58号線沿いの松山エリアの周囲には、地元の人々に親しまれている食やものづくり、音楽や祭り等、ローカルな魅力が豊富に混在している。これら地域の魅力を、ホテルを通して表出させ、多くのゲストに体験してもらう計画である。このような都市観光ホテルの存在は、地域に新たな人を呼び込むことで、地域経済へ貢献すると共に、ローカルの文化の継承にも貢献している。また、マイクロツーリズムといった近場の観光も提案しており、地域に眠っている価値の発掘にも貢献しつつ、コロナ時代に対応できる新しいホテルとして機能したいと考えている。 敷地は、那覇の国道58号線沿いにあり、那覇の都市空間の中心部にある。沖縄の都市の風景を継承しつつ、新たな風景をつくりたいと考えた。そこで、ホテルの顔となるファサードに、那覇の独特なコンクリート建築の象徴である「花ブロック」を発展させる形で採用し、沖縄らしい新たな表情をつくりだす計画とした。建物の前に計画する公開空地には、植栽と一体化した家具を計画し、都市空間に人の居場所をつくりだしている。 街を引き込む通り庭のような空間  街とダイレクトに繋がる1階の空間は、地元の文化を楽しむ都市観光へ繰り出すための出発点であり、旅の基地としての到着点として機能する重要な空間である。建物の前後に2つの出入口を計画し、1階のパブリックスペースが、国道と町道を繋ぐ通り庭として機能する計画としている。 また、国道側には、街への公開空地として、植栽やベンチを常設している。ホテルが運営するバザール等のイベントを通して街とゲストの接点となる計画である。また、床のマテリアルを内外で連続させ、ボーダーレスな空間体験となるようなデザインを計画した。ホテル内の動線上には、ご近所MAPのあるラウンジ、地元の雑貨や本等が買えるショップ、チェックイン・アウトをするフロント、飲食を提供するカフェカウンターとダイニングが大きなワンルームの中に地続きに配置され、ゲストが自然と奥へと引き込まれるような空間構成とした。2階には、ゆったり寛ぎながら文化と出会うユンタクラウンジを計画し、性格の違う2つのパブリックスペースが、街と関わりながら旅を楽しむ豊かな滞在空間となるのではないかと考えている。 沖縄の景観をつくる「花ブロック」の新たな展開  沖縄の特徴的な景観をつくる要素の一つとして、「花ブロック」と呼ばれる穴の空いたコンクリートブロックがある。プライバシー保護、日除け、通風の機能を持った飛ばされないスクリーンとして、台風の多い沖縄の地で活躍している。この「花ブロック」をホテルの特徴的なファサードとして採用し、沖縄の景観への継承と新たな表現になればとGRCのダブルスキンとして計画した。小さなブロックの集積を目地で表現し、987mm×3687mmのGRCパネルをリピートし上部から吊る構造形式としている。GRCの荷重、開口率、意匠をバランスさせ全体を構成して行った。 また、装飾的な「花ブロック」は、様々な応用を考え、外部の床の舗装への応用、インテリアに於いても、吹抜けの光をコントロールする木製スクリーンへの応用、その他、客室内のテキスタイルアートやパブリックスペースでの彫刻的利用等、ホテル内での楽しみとして発展させる計画としている。 インタラクティヴに変化し続けるご近所マップ ホテルを出発点とした徒歩圏内を中心に、ご近所さんのローカルな魅力を発掘し、ゲストに案内をするための、独自のMAPを作成している。ここでは、ガイドマップに載っている観光名所等ではない、地元の小さな食堂や、スポット、イベント等、ホテル独自の目線で集めた情報が厳選されている。また、常に同じ情報が掲載されるのではなく、街の掲示板のようにインタラクティブに変化し続けます。街とホテル、街とゲストのコミュニケーションツールとしても機能していきます。 地元の作家とつくる寛ぎ空間 吹き抜け空間を介した2階には、寛ぐための「ユンタクラウンジ」が計画されている。ファサードの花ブロックを背景に、奥行きの深いソファーの上で、沖縄らしいゆっくりとした時間を楽しむ空間がある。壁一面の棚には、沖縄の地元で活動する作家さんの巧みな技が集合している。沖縄でつくられる三線、民具であるクバカゴ、沖縄の陶器やちむん、琉球ガラスやペリカンピッチャー、琉球みらびやこけし、琉球かるたや、紅型額、シマノネパネル等、ただ飾るだけではなく、この場所が作家さんやローカルの文化との出会いの場所となるように構成している。また、シーサーに於いては、つくられるプロセスを伝える型や道具、起源を辿るシーサーMAP等を作家さんの協力のもと展示し、この場所を通して、訪れたゲストと沖縄文化のインタラクティブな関係が生まれることを期待した。 沖縄の風景を背景にした窓辺ソファ  客室には、窓辺でくつろぐソファを設けている。フレーミングされた沖縄の風景を背景に滞在を楽しむ客室である。大きな窓を取り囲むように、90mm×90mmヒノキ集成材の木軸家具でフレーミングし、大きなソファ、本棚や照明等が一体化されている。自然と沖縄の海や街を眺めながら滞在することが可能である。一様になりがちなホテルの客室空間の中で、風景を取り込む建築的装置であり、且つ機能的な家具のようなかたちをつくり独自の滞在空間をつくり出そうと試みている。 沖縄の色や柄を散りばめた客室空間  立体的に組まれた木軸家具により、20㎡と小さな客室でありながら楽しみのある滞在が可能となっている。また、客室内のカラースキームは、日差しの強い沖縄の光の中で映える彩度の高い色彩で構成した。その他、伝統織物のミンサー織りのパターンをモチーフとしたタイル割りや家具、花ブロック柄のテキスタイルアート等、滞在を通して沖縄を感じるデザインとしている。

物件所在地

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