
徳島県南部の美波町の山間部にある防災拠点施設である。地域の方々とワークショップを重ね、防災機能にとどまらず、地域の歴史・伝統芸能の展示スペースや集落が運営する宿泊施設として日常的に使うことで、非常時の防災力強化につなげたいと考えた。 敷地は廃校になった小学校跡地で、古くから集落の中心であった。建物を覆う大屋根、隣りの神社等を参照した唐破風のある立面など、ワークショップの中で、集落の新しい拠点のイメージを確認しながら決定した。1階はオープンな集会施設で、間仕切ることで複数の団体が同時に利用できる。外周の深い軒下空間には、かつて小学校に植えられていた桜の木を活用したベンチを置き、半屋外的な居場所とした。庭のBBQコーナーや五右衛門風呂は、防災設備も兼ねている。2階は宿泊室で、神社参道からブリッジで直接アプローチできる。吹抜けを囲むように配置した太鼓や法被、浄瑠璃人形は、地域の歴史的な資料であり、現在も祭事で使われているものである。これらに加え、地域の石が埋め込まれた土間、参道の杉で制作した家具、小学校の桜で染めたカーテンなど、地域文化をさまざまな方法で取り入れている。