この計画は、まず、予算の大半を助成によること、その期日のことがありました。 月末締切の助成に対して、依頼があったのが月半ば。計画・設計2週間、施工5週間の超短期の現場で、予算も込み込みの超ローコスト。 自身の事務所にほど近いロケーションだったため、文字通りべったりな設計監理の現場となりました。 ただ、だからこそシビアな条件のなかでも出来ることはあるんだということを提示したかった案件でもありました。 助成金が家具に対するものだったため、引き算のデザインを引用し、動線を考えて不要な部分のみを取り除き、既存を活かしつつ、家具を「置く」ことで空間のコンポジションを成立させています。 本来、家具は生活のための道具であったり、或いは間を仕切る設え・装置であったりします。 今回の用途は福祉事業所で、通所者が作業を行う作業所と、作った製品を売るための販売所を併設する計画だったので、道具や仕切りが不可欠。 移転前の作業所では閉塞感に困っていて、それを解消することが与件に含まれていたため、見通しや風通しの良い空間が求められました。 なので、販売所を路面側に配置、奥の作業所とはカウンターなどの上背のない家具で視覚的に繋ぎつつ、エリアを明確にして、見通しの効く開放的な環境としています。 ここでの仕事は、座りっぱなしで個人が籠りがちなコツコツとする工程・作業が多いので、室内を回遊できるフレキシブルな動線が、移動の少なくなりがちな利用者にとってリフレッシュできる環境となります。 さらに、化粧石膏ボードの既存天井を抜くことで、より開放的に感じられると思います。 また、利用者の中にはコミュニケーションが苦手な人もいて、個別作業にも対応する必要がありました。そのため、テーブルなど可動型の家具を組み替えが容易にできるように配し、利用者が他の存在を確認しつつも個別に集中できる配置構成としています。 今回は、出来るだけ既存を残しながら、家具を持ち込み構成する、言わば、おもちゃ箱をひっくり返して、取り出したものと買い足したもので再構築したような体験ができました。 既存を利用したり、作り込まないことは、言わずもがな廃材や無駄が減ることでもあります。 ストック利用の在り方が問われる昨今、短絡的なやり方に陥らないためには、自分のことと、その少し先のことを考えることが、誰にとっても無理がなく、大切なことではないかと思う。 だから、2歩ほど先を見ることが程よくて、それがエシカルなデザインに繋がっていくように感じる。 そんなことを考えた春先でした。

クレジット

  • 設計
    カンマグラム.
  • 担当者
    前田基行
  • 施工
    近藤建設
  • 撮影
    前田基行

データ