DATA

CREDIT

  • 設計
    NOMA / 桑原淳司建築設計事務所
  • 担当者
    桑原淳司
  • 施工
    三喜谷建築
  • 撮影
    下村康典

神戸市の瀬戸内海沿いに建つ、マンション最上階の改装。中古購入時、内装はともかく環境は素晴らしいものがありました。南の窓からは海が一望でき、晴れた日には時々バルコニーにカモメがやってきたりします。今回考えたのは、静かにこの眺望と生活するための空間です。マンションの部屋の内部というのは、大きな柱や梁による凸凹が目立ちがちです。そうしたノイズを目立たないよう処理し、また、各素材もマンションでよく使用される塩化ビニール等ではなく本物の木、石、タイル、土を採用、天井にはメーカーに特注で作成してもらった40mm間隔で溝を入れたウォルナットの材を張るなど、上質で静謐な空間となるようにしています。開口部はシングルガラスのアルミサッシであったため、すべて真空ガラスに入れ替えました。洗面と浴室はガラス張りで、朝や昼には海を見ながら入浴することができ、隠したいときには天井に埋め込まれたブラインドを下ろします。LDKに面した寝室と書斎の天井までの高さの建具を壁の中に引き込むと、天井がひと続きのより開放的な空間になり、家のどこからでも海を眺めることができます。こうした要素、ディティール、素材ひとつひとつの注意深い積み重ねと、それらを統合する方向性があって初めて物件の持つポテンシャルを引き出し、機能的かつ美しい空間を形づくることができます。

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