
界隈は商業地区のはずれのお寺の点在する地域。大通りから少し入った建てこんだ住宅街で、落ち着いた雰囲気だった。前面道路は5.3m、南側接道。敷地は間口4.9m、奥行10.5mで北側にコブ付の南北に長い形状。この間口にめいっぱい建物を広げるとして、建物は2.5間(4.5m)の幅がとれる計算になる。この敷地の場合、東西隣地側はほぼ余地はないが前面道路側に加え、裏手の北側にも余地・抜けがあった。二階の床を割り、南北の床レベルをずらすことで、明るい二階の光を一階まで届けるようにした。スキップフロアにすることで、廊下と階段を兼ねることができ、動線に使う面積が少なくて済む。階段の吹き抜けを通して建物全体をほぼワンルームにし、個室は必要な時に区切るよう建具をつけた。階段は蹴込のない形状とし、階段の吹きぬけを通して、下階から風がぬけていく。現代美術に携わるご夫妻のため、大きな本棚と美術作品を飾る巨大な壁(東外壁面)を用意し、途切れさせず見せることで、床面積の小さな空間をダイナミックに見せるよう試みた。敷地唯一の目の抜けになる北空を動線の先に見えるよう配置することで、都会で最も手軽に感じられる自然である空をとりいれる仕掛けとしている。道路沿いの二階テラスは広めにとり、植物を育て、太陽を感じる場所とした。その分、居間は狭くなるが、窓を全開放すると、テラスと一体となり床が広がる。テラスの腰壁は数少ない窓の一つである南窓が閉鎖的にならないよう低めに設定しているが、道行く人からの宅内への目線を遮る役割を果たしている。半階上がった一階北側の部屋は明るくなり、床下に収納庫ができた。
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