若宮の離れ

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    岡田佳子建築設計事務所 屋根板金:テクノスライフ 左官:大前左官 木製建具・家具:ボンズウッド工芸
  • 担当者
    岡田佳子、川端威士(構造協力)
  • 施工
    くまがえ工務店
  • 撮影
    鳥村鋼一

計画地は田畑に囲まれた集落にあり、広い敷地には築150年ほどの母屋(建主の祖母の家)と蔵が建っている。13年前、建主の祖母が高齢となり、建物の維持が困難になり始めた頃、音楽家である建主が母屋に住むことになり、部屋の一部をコンサートスペースとして改修した。今回、建主の親も母屋で暮らすことになり、建主の寝室として、また家族や海外からの音楽家が逗留できる場所として、離れを計画することになった。建主からは「リビングのような場所」と寝室、水回りが求められた。「リビングのような場所」とは、世界中から集まる音楽仲間が気楽に集えて、楽器の演奏もできる場所のことである。来訪者を自然と招き入れるよう、離れを敷地に入ってすぐ横に配置し、建具のない外部と繋がったオープンな土間空間を離れの横に設えた。建物内外の境界をなくしたこの土間は、アプローチと一体となって使用できるコンサートスペースにもなる。また母屋のコンサートスペースも土間が広がっており、行き来しやすいようにしている。寝室はオープンなリビングとは対照的に、人からの視線を感じないよう窓の位置を検討し、落ち着いて過ごせるようにした。外壁は敷地内の土を使用した土壁として、これから先も母屋と同じように建物の記憶が伝わり、またできる限り人の手によってつくり出せる素材とした。敷地内にある蔵に保存されていた古い棚などを建物内に配置し、古いものと新しいものが混在する場所になっている。新しくできた離れも「想いが帰る庵」として、建主や立寄る人びとがそれぞれの想いを馳せる場所として、これから先も存在し続けてほしいと思う。

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