宇都宮の家

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    丸山弾建築設計事務所 構造材:益子林業 家具工事:RILNO 田中工藝
  • 担当者
    丸山弾
  • 施工
    伴工務店
  • 撮影
    丸山弾

 敷地の前には田んぼが広がり、北には屋敷森がひかえ、隣には母屋や納屋、大谷石の蔵が並んでいました。新しく建てる家は、周囲の環境に合わせるとともに、南の眺望を楽しめるように東西に延び、田んぼに軒を下ろす切妻のかたちに決まっていきました。  南に広がる田んぼの景色をどう受け止めるか考えるなか、南だけに開口部を設けるのではなく、東西の奥行きのある風景、あるいは北の屋敷森に対しても視線を通すのがよいのではないかと考えが変わっていきました。南北の近景、東西の遠景に対して窓を開くことによって、どの居場所にいても、様々な方向に視線が延びる空間となりました。  1階には、東西に伸びた廊下にそって家族の寝室や水廻りがあります。廊下の幅をあえて広くして、突き当たりに洗面台を設けたり、子ども室との間仕切りは引戸にしておおらかにつなぐことで、単なる移動の場としての廊下にせず、ひとの気配や営みを感じる空間にしました。  廊下の脇にある12段の階段を昇ると、リビングに出ます。2階は大きなワンルームですが、構造壁にもなる袖壁や垂壁で緩やかに区切られており、見え隠れするようにバルコニーやリビング、ダイニングやリモートワークスペースを配置しています。空間を緩く仕切っている壁が、各空間を包み込むとともに、東西の遠景に対する奥行き感を増しています。  1日の始まりには東側のバルコニーに朝日が注ぎます。日中は南側の窓から、田んぼの景色と明るい日差しが入ります。夕刻は西の小さな窓から淡い光が廻り、袖壁や垂壁が薄暗い影に包まれます。光や明暗による一日の移り変わりを愉しむとともに、田んぼの稲や落葉樹の変化による季節の移り変わりも感じることができます。  田んぼの前に建つ、シンプルな切妻の家ですが、さりげない仕掛けを繰り返すことで、どの場所にいてもゆっくりと過ごすことができ、移りゆく時間の流れを愉しめる家になりました。

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