
PROJECT MEMBER
神戸市の、川の斜面上に建つ戸建て住宅である。 建築主は解体前提で古家付土地を購入したが、地質調査、隣接する川の護岸の斜面測量を実施した結果、新築の場合は杭基礎工事に伴って建設費が予算を超過する懸念が生じた。 一方、既存建物は1974年に竣工した鉄筋コンクリート造2階建てだが、構造図と構造計算書によって、現行の耐震基準を満たしていることが確認できた。 コンクリートコア採取による測定試験も行い、既存部の継続使用が可能であると確認できたため、基礎と1階および2階スラブまでを保存し、それより上部を解体の上、木造で増築することを提案した。 重厚なRC造の2階を軽快な木造に入れ替えることにより、構造面では建物が軽量化され、耐震性能が向上し、さらには崖の負担を低減できる。また、実利面では解体費用および廃棄物の低減、杭基礎工事の省略、工期の短縮、ひいては総工費の削減が実現した。 さらに、陸屋根だった既存建物は北側からの斜線制限のため天井が低かったが、木造の勾配屋根により、増築後の2階部分が天井の高い伸びやかな空間になったのもメリットである。 建築計画上は2階が人工地盤状となり、自由な計画が可能となった。 1階には玄関と寝室、バスルーム、倉庫のほか、ガレージとゆったりした玄関前ポーチが既存フレームの下に収められている。 敷地北側が一段上がったひな壇状のため、1階壁面は既存躯体のフレームにコンクリートブロックを充填し、崖崩れの場合の安全確保をはかった。 木造で増築された2階には、リビングルーム、ダイニングキッチン、洗濯室、2つの寝室、バルコニーを配置した。 2階の外壁には焼杉板を採用し、防耐火性能の向上、メンテナンスサイクルの長期化、維持管理費用の軽減をはかっている。 脱スクラップ&ビルドが謳われる昨今、本計画はこれからの既存ストックの活用、建築のあり方に対して一つの解となると考えている。