Woven Screen Office

ベトナム・ハノイにおけるオフィスのリノベーション計画である。 ベトナムでは高温多湿な温熱環境に対応するため、伝統的に穴あきブロックが建物のファサードに使われてきた。物理的な環境を調整しつつ、都市の中で住居同士の適度な距離感を保つ社会性に着目し、これを現代化した三次元プレキャストコンクリートブロック“Woven screen”を製作した。円弧が連なる平面レイアウトの中にこのコンクリートブロックスクリーンを配した計画とし、空間の分節と接続、波打つ3次元の曲面による特別な体験を生み出す、「開きながら閉じる、プライベートでありつつパブリックな空間」を実現した。 “Woven screen”は280 x 280 x 100mmのモデュールのブロックを互い違いに2つ組み合わせて1ユニットとした。コンクリート型枠のオス型を3Dプリンターで作製し、ローカルの製作工場が560ユニットの生産を行った。 コンピューテーショナルデザインのプロダクトを地場の技術を活用して製作するチャレンジである。 オフィスリノベによるつながりの創出  ベトナム・ハノイにおける、約25名のスタッフのためのオフィスのリノベーションプロジェクトである。既存の建物はもともと3つの異なるビルを統合したもので、これまでは4つの異なる部署が各建物の各階に散在していた。そのため、物理的な行き来の不便と社内の結束不足、部署間の連携力の弱さなどが問題となっていた。  従って新しいオフィスでは、3つのゴールを設定した。コミュニケーションを活発化させることで、社内の連帯感を高めること。各人の生産性の向上と集団のシナジー効果を発揮すること。そして魅力的な空間によって毎日の仕事を楽しみ、クリエイティブに過ごしてもらうことである。これらを可能にするため、建物を水平につなげ、オープンなフリーアドレスオフィスとして、『オープンと同時にクローズド、パブリックでありながらプライベート』な空間を実現した。円弧が連なる平面レイアウトをつくり、中空のコンクリートブロックスクリーンによって創造的な働く場をつくる計画である。   オープンでクローズド、パブリックでプライベート  ベトナムでは高温多湿な温熱環境に対応するため、伝統的に穴あきブロックやレンガの透かし積みが建物のファサードに使われてきた。これらは物理的な環境を調整しつつ、都市の中で住居同士の適度な距離感を保つことに貢献している。  本プロジェクトでは人と人とを適度な距離感でつなぐ設計のコンセプトとした。曲線を使ったプランに加えて、中空のスクリーン壁のもつ社会性に着目した“Woven Screen”を開発した。この現代の穴あきブロックによる空間の分節と接続、表面の波打つ3次元の曲面は特別な経験を生み出し、開きながら閉じる、プライベートでありつつパブリックな空間をつくり出す。  各スクリーン壁は曲面となるため、浅い角度では視覚が完全に遮られるが、正面からはアイコンタクトできる多様な距離感を保つ。また、スクリーン壁の内外で異なる空間の趣きを作ることができる。  壁の内側は部長エリアや印刷室、会計室などの仕切りとして使用し、その地と図の関係にある間の余白をフリーアドレスの執務空間とした。スクリーン壁のラインをオフセットさせた大型の机と、床・天井の素材の切り分けによって空間をゆるやかに分節しながらオープンなオフィスをつくり出した。   三次元コンクリートブロックの製作  積み上げた姿はさながら縦横に編み込んだようになる“Woven screen”はプレキャストコンクリートブロックによって構成されている。このブロックのモデュールは280 x 280 x 100mmのサイズのブロックを互い違いに二つ組み合わせて1ユニットとした。  三次元の曲面をもつブロックの製作にあたっては、3Dプリンターが大きな役割を果たした。実寸大のモックアップを作製し、これをコンクリートを流し込む型枠のオスとして使えるようにローカルの製作工場に渡した。最初の1ピースが完成した後、プロジェクトで使用した560ユニットの生産が行われた。  ベトナムでは工業製品を使用するよりも、ローカルの製作工場で手作りするほうが早く、安い場合が往々にしてある。また、手作りだからこその柔軟性が残っている。“Woven screen”はコンピューテーショナルデザインのプロダクトを地場の技術を活用して製作するチャレンジである。  “Woven screen office”は昼夜、刻々と変わる光に浮かび上がり、様々な影をつくる。オフィスの執務空間を超えたインスピレーションとセンセーションをもたらす。日々の仕事だけではない、生活を楽しむ空間となる。

クレジット

  • 設計
    Takashi Niwa Architects
  • 担当者
    高橋京平、Camille Labelle, Phuong Anh Nguyen
  • 撮影
    Trieu Chien

データ