
循環と食のストーリー 鹿児島県鹿屋市にある既存飲食店舗の改修プロジェクトである。 コロナ禍による業態変更に伴うリニューアルであり、クライアントの持つ飲食部門リソースを集約し、再構成した店舗である。 クライアントは畜産資料の販売を行う鹿児島県鹿屋市の寿商会である。 販売先の農家から自分たちの飼料を食べて育った家畜を精肉・チーズ・ジェラート等の原材料として買い戻す形で仕入れ、畜産農家との間での循環を作り出している。 また、寿商会は飼料から生産、加工、消費までを流れを持った「食のストーリー」として提案しており、このレストラン、カフェは販売した飼料がお客さんのところに行き着く最終地点となる。 既存店からの地元ファンを引き継ぎ、リニューアル後は地元以外からも新たなファンを獲得すること。 ここでは「食のストーリー」を可視化するため、既存店よりオープンになった厨房内の 生産、加工風景をライブ感も含めて楽しんでもらえるような大きな吹き抜けを作った。 吹き抜けによって2階や螺旋階段からも厨房が見えるようになり、焼きたてパンの香りまで楽しめるようになった。 エントランス位置変更と配置 クライアントの保有するチーズファクトリーやホテルが隣接してあり、これまでバラバラな計画として建てられていたが、エントランス位置を変えることで人の流れが変わり、ひとまとまりのエリアとその動線計画が新たに生まれた。 また外部からの動線の延長で店内カウンターに並ぶパンやチーズ、デリ、ドリンクなど様々な商品に対し、決済や動線を捌きつつ、螺旋階段をぐるぐると登って2階の飲食スペースにスムーズに流れる動線とすることとした。動線を可視化するためのデザインとして大きな吹き抜けに挿入された曲線、曲面が全体を柔らかく包むような空間となった。 構造躯体の変更 既存の構造体をできるだけ再利用しつつ大きな吹き抜けを作ったり、屋根のトップライトから1階にダイレクトにそのまま採光を取り入れるように床に開口を作ることで、垂直的方向への意識を伴った空間とすることができた。 新規に入れ替えた構造体はシルバーに塗装し、構造的視点でも新旧の対比を明確にした。また吹き抜けに残った既存梁を照明レールの受け材と12面体スピーカーの設置場所として再利用した。 平面的なぐるぐると回る人の動線に対し、垂直的な光の動線と言える2つの要素を骨格として持った明快かつ複雑に絡み合う空間になっている。