敷地一帯は元々、瀬戸山という小高い山であったが、宅地や商業施設の開発によってかつての山の記憶が思い出せない程にフラットな台地となっていた。 その台地のなかで与えられた建築可能なエリアは、大規模商業施設駐車場の中央に位置し、どの方向からもよく見えるため、所謂裏を作るには相応しくない配置であった。 また、店舗のメイン出入口と想定される場所からは、特徴的な形をした烏帽子山などの山々を望むことができるという周辺環境であった。 このような場所の記憶や周辺環境、配置の条件から、山のように見る位置によって様々な表情を見せる建築を目指した。 まず長方形の紙を斜めに折り曲げたような単純な操作を施した切妻屋根をかけた。これによって2本の軒先、棟のラインそれぞれが異なる勾配を持ち、どの立面も異なる表情を見せる。 建物に到着するまでの上り坂に呼応するような斜めの軒に対して反対側はオーソドックスでスタティックな軒先。水上側の妻面は烏帽子山など周囲の山々と呼応しつつ店内へのパースペクティブを強調させる。バックヤードがある水下側はヒューマンスケールの切妻、といった具合である。 店内においても、この異なる勾配の屋根を強調させるように高さ方向に分節した壁面の構成とした。

クレジット

  • 設計
    平居直設計スタジオ
  • 担当者
    平居 直
  • 施工
    ハンドマン
  • 構造設計
    エス・キューブ・アソシエイツ 橋本一郎
  • 撮影
    楠瀬友将
  • 植栽
    緑演舎

データ