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敷地北側には能登川が流れている。ここでは、夏にホタル、秋に紅葉を楽しむことができ、時には鹿が訪れる。 そのような自然あふれるオープンスペースを陽のあたる北庭として取り込むことで、自然とのふれあいが可能な豊かな時間を共有できる場所を提案した。 能登川に向かって下った階段屋根は、川に集まるホタルや鹿、紅葉を楽しむことができ、若草山や生駒山の山並みを望むことができる。また、お盆には奈良の大文字送り火、正月には若草山の山焼きを楽しむこともできる。 階段屋根は、古都の四季を感じることができる特等席となる。この階段屋根によって、多くの人が集まってくつろぐことができ、川辺も取り込んだ憩いの場所をつくり出している。 階段屋根は室内においては縁側の庇となり多くの開口部を確保し、北側オープンスペースに反射する安定した明るさを室内に取り入れることができる。加えて、組格子耐震壁により可能となる東西南側上部のガラス欄間から入り込む光が北側の組格子天井に反射することで、室内に明るさと光と影の動きによる時の移ろいを演出する。 さらに、組格子屋根により、視界を遮る耐震壁を最小限にすることで、視線が各部屋から縁側、北庭、能登川へと抜け、彼方の空まで広がっていき、回遊性をもたせた平面構成によって、限られたスペースに開放感を与えた。 人がどこに座っても開放感が得られる構成にすることにより、屋上階段とあわせて多くの人を招き入れることのできる家となっている。 階段状の形態は、自然エネルギー利用による快適な空気環境にも寄与する。 北下がりの断面形状によって、夏は縁側の開口部から川面を流れる新鮮な涼風を受け入れ、南側上部のガラス欄間や温度センサー付き換気扇から排熱することができ、冬は東西南側上部のガラス欄間から取り込んだ太陽光を室内全体に行き渡らせることで、一年を通じて自然エネルギーを利用した快適な室内環境を実現している。