HSベース 「余白」と「接点」

​街に開かれた「余白」を内包するカフェ&バーの計画です。江戸の周縁という立地が持つ場所の魅力を引き立てる場所として「余白」と「接点」をキーワードにデザインしました。 ■ 接点 「HSベース」は、五叉路の交差点に建っている。商店街の起点であり、全ての坂道が集まる場所である。通学路であり、信号待ちの場所であり、駅への近道である。かつてこの道は、参勤交代の花道の始まりの場所であった。江戸の内側だと言う人もいれば、外側だと言う人もいた。明治に入ると、一面の畠にもなった。水運がひかれて、新興印刷業の一大地となった時もあった。三業地として、花街が栄えた時代もあった。この場所は、いつの時代も「接点」として機能していた。 ■ 余白 「HSベース」は、入組んだ台地の谷間に建っている。高台は計画的に整備され、低地は無秩序に発展する。残された「余白」は様々なヒト・モノ・コトを受け入れる。「余白」であるから、「接点」でありえたのかもしれない。新しい「文化」は、いつでも「余白」から生まれる。 ■ 縮図 「HSベース」は、街の縮図である。徳田秋声の絶筆『縮図』は未完に終わったが、ある置屋を舞台に、戦前末期の、街の、時代の縮図を描き出そうとした。物語に続きがあるのなら、この周縁の小さな「余白」に集まる人々によって、紡がれていくことを期待する。

クレジット

  • 設計
    和久田幸佑建築設計事務所、早田大高設計事務所
  • 担当者
    和久田幸佑、早田大高
  • 施工
    I・N・G
  • 撮影
    上澤大樹

データ