




呉市の本通四丁目、市役所通りの以前は建材屋だったテナントビル。第二回のリノベーション スクールの場所にもなった縁もありこの場所をヘアサロンに改修する依頼を受けた。 既存の空間を見て一番印象に残ったのは建築物に遺されたマテリアルたち、外壁のレンガタイ ルや通路部分のガラスブロックなど建材屋ならではの無骨なマテリアル選びに心が惹かれた。 そしてこのマテリアルを軸に空間作りをすることができないだろうかと考えた。 ヘアサロンの名前はHAIKU。 この5つの文字組みは世界のどこでも共通に知られる言葉となっているとのこと。 そう考えながら空間を見ていたらマテリアルのモジュールが原稿用紙のマスのように見えてき た。 マスに文字を投影することは不可能だが、均一なグリットに姿が投影されることでその人の物 語が顕れてくるような空間になれば面白いのではないかと考えた。 立地は角面となり三面のファサードの至る所に看板やテントの跡や剥き出しのインフラがその ままり、限られた予算ではこれを全て作り変えることは不可能と感じ、本解体工事で生まれた ハツリ跡などをあえて仕上げず、残すことで無骨さをより高め、新しく作られる空間と対比さ せることで二つの強い時間軸を混在させて空間を成立させることを考えた。 外壁面からセットバッグした所に外壁タイルのモジュールをスケールアップし連動させるよう に横長に抜き格子を組むことで新たなファサードの建具を作っている。 この格子を既存躯体であるガラスブロックで挟み間に細い路地を表現し、エントランスまで繋 げた。路地の一番奥には五葉松の盆栽を土台を作りディスプレイする事で、歩道からの見た路 地の奥行き感をより強調させている。 店内はコンクリートのスケルトン空間にサロンの機能を和の様式で落とし込み、シャンプー台 にはアクセントとしてレンガを用いた。これは少し昔、この街が人で溢れていた頃の商店街の 歩道のマテリアルに使われていたことに憧憬の意を込めている。 また躯体とセットバッグされたファサードの間に生まれた隙間は街に開放させている。公園の 遊具のようなパブリックさと和の庭園に置かれたような石の厳かさの中間体の形を模索した造 形物は、視覚的にも触覚的にも面白い型となり、ある時は子供の遊び場にとあるときは年配の 方の目の癒しに、呉市市役所からつながるこの通りがよりパブリックな場として愛されるよう にと願いを込めている。 無骨な既存躯体の空間と繊細な和のサロン空間。この相反する二つをつなげるのはマテリアル の最小モジュールをマス目として捉えた様々な形の原稿用紙のような壁面、このマス目に人々 が投影される事は時代を超えてその人の生き様や人生が俳句のように浮き上がる事となり、静 寂な空間に凛とした豊かさが生まれてくれたらと思う。
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