DATA

CREDIT

  • 設計
    石井大五+フューチャースケープ建築設計事務所、設備設計:ZO設計室
  • 担当者
    加藤弘行
  • 施工
    池田組
  • 構造設計
    南雲正一+匠設計
  • 撮影
    加藤弘行

豪雪地の中心街に建つ住宅。既存の店舗を残し、住宅のみを建て直したが、構造遡及を避けるため、2つを離し、雪除けの庇付き路地でつないだ。 住宅の出発点は、冬の暗い室内風景だった。冬が明けるまで、予め雪の多少は分からないから、建て替え前の家では、最大3mの積雪に備え、12月から4月まで、1階の窓を雪囲い板で覆い、自然光から閉ざされた生活を送っていた。 施主は、両親に配慮して、1階主体の生活を希望したが、ふつうのつくりでは、冬は光から閉ざされてしまう。解法として、落雪のために勾配を付けた屋根の小屋裏をロフトに利用し、積雪より高いロフトの高窓から入れた自然光が、ロフト床に設けた開口部経由で、1階各室に届くようにした。光を入れる大きな窓は、冬の厳しい地域には不釣り合いだが、4重の空気層を設けることで、断熱性能を高めている。そうやって実現されたロフトと開口部から、家族のつながり方や、サスティナブルな家の運用が、逆に喚起されることとなった。 家族のコミュニケーション 暗くなると、ロフトの開口部から各室の灯りが、洩れて来る。全艶の塗装で仕上げた空のような2階天井に、その灯りがぼんやりと映り、家族の気配が、間接的にロフトで混ざり合う。「共有スペース+個室の住宅」とも、「ワンルーム型の住宅」とも異なる、ぼんやりとしたコミュニケーションが、家族の新しい距離感をつくることになる。 ロフトは、物を置く現実的なスペースでもあり、物が語る、時間の上での家族の気配も、今を生きる家族の気配に重なって行く。 サスティナビリティーへの配慮 (1)冬季の自然光 ロフト高窓から、ロフトの開口部経由で、1階に自然光が落ちる。 高窓は大面積だが、ペアガラス内側に、4重の中空層+空気層を確保し、熱損失を防ぎ、断熱性能を上げた。自然光は、窓面で拡散され、耐力壁を兼ねた鏡の壁で、さらに、増幅。それらの効果で、日差しの弱い冬季の昼間でも、1階の各室は、人工照明なしに、十分な照度を確保した。 (2)20年間のエネルギーコストの総額 冷暖房、給湯、屋根融雪のシステムを選定するにあたり、さまざまな熱源と形式の機種の、20年間にわたるイニシャル、ランニング、点検、交換コストを算出。ランニングコスト以外を含めたのは、それらも、生産、運搬のエネルギー消費を発生し、サスティナビリティーに関わるからである。 数十通りの中から、20年間の総額のもっとも安い組み合わせとして、電気式空調の床下設置による冷暖房、一般型ガス給湯器による給湯、ガス給湯による温水循環パネル式の屋根融雪を選定。 (3)省エネに配慮した空調システム 1階床下に電気式空調を設置。床下を、空調のエアチャンバーとして利用。 床ガラリから出た空気が、室内循環後、トイレ及びロフトの吸込口から吸込まれ、ロスナイ経由で、空調機に戻る。その繰り返しで、1時間ほどで、一棟全体の室内空気が、ほぼ同温で安定。 省エネ循環に移行した際、温度低下が起こらぬように、家全体を、断熱材で魔法瓶のように覆った。1階床下は、外断熱+躯体内側に断熱材を施し、それは、外周部以外の内部の基礎立上りにも及ぶ。 それらにより、コストを抑えながら、家全体に温度差のない快適な状態をつくり出した。 (4)南面の外壁+大きな世界とのつながり 家の一辺を、斜めに切り取っている。東西の方位軸に合わせているため、正確に南面する。 建物に囲まれ、風景も開けず、冬は雪に囲まれる。そういう状況の中、方位軸を、室内に持ち込み、外に広がる大きな世界を暗示させた。 晴れた日の南中時には、日差しが、壁面に垂直に落ち、時間の変化を意識する。冬の日中は、明るさを最大限に取り入れられる方位ともなる。 (5)夏季の自然風 庭に面する南面と、路地に面する北面に相対して窓を設け、かつ、路地空間の高さが煙突効果をもたらすことで、自然風の通りやすいつくりとした。 (6)耐震性能 中越地震で大きな被害のあった地域である。そういう経緯もあり、筋交は、必要壁量の2倍以上を確保し、さらに、全壁面で、構造材の上に、構造用合板を直打ちしているため、耐力は2倍以上にアップしている。

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