宇和米博物館 LOCAアクティベーションプロジェクト

ビルディングタイプ
美術館・博物館

DATA

CREDIT

  • 設計
    齊藤正轂工房、田村智広、鍋島ゆかり(設備設計)
  • 担当者
    (齊藤正轂工房)齊藤正、泉秀紀、藤田敦、馬淵好司
  • 施工
    千葉工務店、中央綜合建設、河野建具店、産光環境設備、丸山電設、カミクボ電設、石井章(金属アート作家)
  • 撮影
    三崎利博

不活性公共施設のアクティベーション 国内の地方資料館の多くは、入館者が激減し、疲弊している。平成の大合併がそれに追い討ちをかける結果となり、公共施設の再配置計画で廃止の扱いを受ける施設も出てきた。指定管理制度で運営を持続させているものはまだ救われているが、根本的な解決には至っていない。そうした背景を受け、2015年に総務省が「公共施設オープン・リノベーションマッチングコンペティション」を開催した。公共施設ナビに登録した施設に対して、クリエイターや建築家がリノベーションを提案し、プロポーザル方式で審査され、採択されるというものだ。西予市の宇和米博物館もこのコンペにより採択され、リノベーションが始まった。宇和米博物館は、1990年に旧宇和小学校の建て替えに伴い移築、コンバージョンされ、資料館に生まれ変わった建築である。日本で最も長い木造校舎の109m廊下を有しており、それを利用した雑巾がけの聖地として人気のスポットでもある。リノベーションに際しての市からの要望は、西予市の文化財であることから、不要な釘を使う改造は行わず、来館者に魅力のある空間づくりを期待するというものであった。ほとんど手を加えず新しいものにするという難題だったが、市職員とのワークショップで、施設の使い方を博物館機能に限定することをやめ、「もともと小学校だったこの建築は、学校に戻りたがっている」をコンセプトに、インキュベーション施設やレンタルオフィス、子どもの遊び空間に一部を置き換えることで、内容の刷新を試みた。 引き渡し後、指定管理者の選定も行われた。私はつねづね、建築をつくる側と使う側には、建築を使う上での意図に少し隔たりがあると感じており、その隔たりを埋めることができればよい建築を育てることができると考えていた。そこで、弊社の災害支援部隊である一般社団法人ZENKON-nexの日常活動として、当施設で(どのような)社会実験に乗り出そうと指定管理者として応募し、指定された。 私はこのつくる側と使う側の隔たりを埋める行為を「アクション」+「イノベーション」=「アクティベーション」と呼んでいる。コンピュータ用語として使われる言葉であるが、建築の新しい仕事領域を切り開くにふさわしい言葉だと確信している。この概念に共感し、この社会実験に参加する若者が増えていくことも期待している。 公共施設の指定管理者制度等をアクティベーションとして建築家が取り組むことは理にかなっている。デザインや企画力があり、建築のリテラシーのある者が、公共施設運営のリーダーシップを取ることは、今後の公共施設のあり方そのものを変えることに繋がるかもしれない。

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