




敷地は、神奈川県川崎市の閑静な住宅街に位置し、北から南に向かって6mの急な高低差のある傾斜地である。晴れた日には、富士山や丹沢山脈が見える見晴らしの良い家には、高齢の母が暮らしていて、この度娘夫婦が同居することとなり、プロジェクトはスタートした。 傾斜に沿うように、3フロアが少しずつずれるように建てられた既存の住宅は、南向きに建っているにも関わらず、細かな間仕切りによって、室内は暗くて、風通しも悪く、傾斜地の恩恵をうまく享受できていないと感じた。 そこで、中間層である1階を玄関とリビング、キッチン、風呂など、家族全員が使う共有スペース、地下1階と2階はそれぞれ母、娘夫婦の寝室の個室スペースとした。3層が唯一重なる家の真ん中に、地下から小屋裏まで連なる大きな階段室を設け、3フロアを緩やかに繋いでいく。この階段室は、通気塔としても機能し、室内に篭っていた暑い空気が階段上部に設けた窓から外に抜ける仕組みになっている。 2階の寝室は細かく間仕切られていた壁を撤去し、ガラスで間仕切ることで、明るく開放的でありながら、最小限のプライバシーを確保した。1階は床面積の半分を土間として、玄関とキッチンを配し、景色の良いリビングは2面の大開口で抜けを作り、既存駐車場とリビングを繋ぐように三角形のバルコニーを新設。屋根を延長させることでバルコニーは、日差しや雨をしのげるもう1つの部屋のような心地のよい居場所とした。 地下1階にも土間をつくり、外構のアプローチを整備することで、家の中を介して断面的にも分断されていた南北の前面道路を通り抜けできるようにした結果、新しくできた様々な内外の繋がりは、生活に多様性を生むことになった。 高低差のある敷地を立体的に再考し、足し算引き算をした結果、既存住宅にはなかった個性ある居場所と空間の関係性が生まれ、それぞれの居場所で周辺環境と家族の繋がりを楽しみながら、新たな暮らしをスタートさせることができた。

