UNITEX改修計画

 東京町田市の歴史ある「絹の道」に位置する、創業30年の LTO(データ保存磁気テープ)を扱う企業が、創業者の代替わりを契機に既存社屋を本社として改修する。機械式駐車場であった1階と地階を、顧客向けの展示と社員同士の交流空間に転用し、金属メッシュのファサードとともに新たな会社の顔となる空間としてデザインした。  記録媒体の磁気テープを扱う本社として、テープの曲線を連想するドレープ状の金属メッシュで既存のタイル貼外壁を覆い、新旧要素の重なる外観が街の記憶を継承する。金属メッシュは直射光を拡散し熱負荷を減らす環境装置でもあり、白を基調とした内装が拡散光を奥に導く。会社ロゴのX字をモチーフにした1階の引戸は、内部の使い方に応じて開閉することで街と交感する。  内部は既存機械式駐車場の大空間を活かし、吹抜を介して地下の閉鎖感を感じさせない一体的な交流空間とした。展示部分は木の仕上げを用いて親しみのある場所づくりを行い、一部は磁石を利用して社員が自由に更新可能な展示壁とした。オープンキッチンなど対話を促す様々な空間的仕掛けが重なり合い、自然な交流を促す。設備面では、EVを設置し誰もが快適に働ける環境づくりを行うとともに、CO2センサーによる自動換気と、一体型除加湿機による湿度の自動制御で、空調負荷を軽減し省エネルギー化を図った。  各部のデザインについては、企業や製品を想起する 3つのモチーフを展開し、本社ビルらしい個性のある空間づくりを心掛けた。1つ目は、社名の UNITEX のロゴで強調される「X」字モチーフで、ファサード引戸や1階展示壁、手摺子、家具、照明等に「X」字を繰り返し用いた。2つ目は磁気テープの「曲線」モチーフで、ドレープ状の金属メッシュファサードや、ステンレス製の「曲線」形状の内外看板と室名のサインは、直線的な空間と対比をなして場所を彩る。3つ目は巻かれた磁気テープの「積層」モチーフで、家具や展示コーナーは榀共芯積層合板を用い、年輪のように「積層」面を見せることで、LTOという情報を蓄積する企業イメージを表現した。  既存の骨格を生かしつつ企業をイメージする新たな要素を重ね合せ、社が掲げる「温故知新」の精神を空間で体現する。その空間の中で社内外の交流がこれまで以上に活発に行われ、LTOについて広く情報を発信していく拠点になることを期待する。

クレジット

  • 設計
    T2Pアーキテクツ株式会社、サイン:Affordance、家具:JTA株式会社、設備:シー・エイチ・シー・システム株式会社
  • 担当者
    小野龍人、三浦朋訓、Yang Shikwan
  • 施工
    シー・エイチ・シー・システム株式会社
  • 構造設計
    株式会社コウゾウケイカクロナンナン
  • 撮影
    中野幸英

データ