




PROJECT MEMBER
東京都東村山市にある元車庫棟を野菜の直売所に転用する改修プロジェクト。 依頼主は江戸時代の頃から代々引き継がれ、今では細切れに点在してしまった農地の中で都市型農業を実践している。少量多品目を生産する都市型農業においては、その場での実験的なモーメントを積み重ね、最適解を更新し続ける個性が常に求められている。今回は、この活動を支える拠点となる場を依頼主と伴走しながら構想していった。 改修対象である元車庫棟は3間×3間の正方形平面で、南側にシャッター付きの大きな開口が空いている。車庫のために作られた木造一部鉄骨造の開放性が高い空間に対し、まずは家具という小さなスケールを手掛かりに設計をスタートさせていった。家具の製作と内装の解体を通して、日々の実験的な活動による依頼主自身の意識のゆらぎを相対化し、掬い取るべき本質をより正確に捉えたいと考えたからだ。当初は変化を繰り返す前提とのズレをなんとか調停しようと意識の先回りをするような提案を続けたが、ある時から調停することを諦め、ゆらぎそのものを許容できる幅を空間に落とし込むことが設計の中心へと据えられていった。 元々の開放的な空間特性は活かしつつ、南側の大きな開口に5枚引きの引き戸を設えることで、まちとの間に可変的なグラデーションを持ったつながりをもたらしている。また、床から1185~2000mmの手の届く範囲の壁面を有孔合板とすることで、活動の変化そのものがレイアウトとして表現されていく。有孔の壁はフックや棚を自由に取り付けられるほか、新設した断熱層の空気循環としても機能する。 施工については予算の都合もあり、依頼主と設計者自らが中心となって工事を行った。ポイントごとで職人にお願いしながらも、その上から自主施工重ねざる負えない状況を素直に受け止め、技術的な洗練度にバラつきのある小さなディテールを複層化させていった。結果的に、この先の未確定を寛容的に受け止めるどこか気の抜けた、ゆるい空間の質を徐々に獲得していった。 この先も際限なく繰り返すゆらぐ瞬間が自身の活動を反射させるように空間へと滲みを作り、施主固有の個性を導きだす土壌となり続けることを願っている。

