敷地は、前面にゆるやかなカーブをともなう幅員8mの道に面した場所にある。間口・奥行きともに約20mのほぼ真四角でゆったりとした土地である。 周辺には計画地と同様に余白の多く、落ち着いた雰囲気の住宅地が広がっている。この土地の持つゆったりとした距離感と方向感覚を住宅につかませたい。かつ、厳しい自然環境から導かれる機能的な性能や形態をいいわけに、この豊かな余白に対して閉じる住宅とはしたくない。 そこで大きな庇を外部に広げて、住宅に外の空間を大きくまとわせ、断熱ラインから分離した新たな外形を作ることとする。さながら、胴体から伸びた手足のように、余白をしっかりと自分のものとしてつかみとる。外から見たその様は懐のように開放的に開き、かつ意識的に奥性をはらんだ形や配置により、敷地境界のその先へ関係を導いていく。 -外から見る- 大庇や、敷地境界からオフセットした低いCB塀などの外構物は、外部に空間を作るように庭を演出し、そのキャッチーな振る舞いにより周辺からの視線を敷地奥へと引き込む。塀から延長するガレージは、住宅に入り込みつつ半内部空間を作りながら、外構の一つのように道路と関係をとる。 -内から見る- スキップフロアの中心にはリビングがあり、部屋間で共有された一枚の大きな壁を横断するだけで、すぐに家族は繋がることが出来る。窓からは外構物が媒介して、「父母寝室から北側庇下のひっそりした庭」「子供室から西側の広々した賑やかな庭」「主寝室から周辺住宅との間にできた余白」などふとしたときにこれら住宅街との関係が風景として垣間見える 直接的な内外の繋がりではなく、自然環境からシェルターとして生活を守りつつも、内部空間と同等の価値を持つものとして外部を空間化することで、内部から外部へ意識を向け、同時に周辺から敷地内へ意識を向ける。 住人と他者が手を結ぶように相関する意識が、双方から開かれた構えを作る。 それはリテラルな面積を横断して、持続していく生活の風景となるだろう。

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クレジット

  • 設計
    ARCHIDIVISION/塩入勇生+矢﨑亮大
  • 担当者
    塩入勇生、矢﨑亮大
  • 施工
    本間建業
  • 構造設計
    辻拓也
  • 撮影
    中島悠二

データ